(この記事への投稿と,それに対するメタボリックスの山田代表取締役からのコメントを,
「記者の引き出し,デスクの引き出し:続「アジャイル開発」 ---- 読者の投稿と山田氏のコメント」
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メタボリックスの山田正樹 代表取締役  「いよいよ日本でも,アジャイル開発手法が受け入れられる環境が整ってきた」。こう語るのは,日本における「アジャイル開発手法」の第一人者,メタボリックス(http://www.metabolics.co.jp/)の山田正樹 代表取締役(写真)だ。

 アジャイル開発手法とは,「アジャイル(俊敏)」の名の通り,品質を保ちながら短期間でソフトを開発するための手法の総称。最も有名なのは「エクストリーム・プログラミング(XP)」だが,このほかにも「Scrum(スクラム)」,「Cockburn's Crystal Family(Crystals)」,「アダプティブ・ソフトウエア開発(ASD)」,「フィーチャー指向開発(FDD)」などがアジャイル開発手法に分類される。

 米国では,ソフト開発の現場でXPが徐々に広まってきたこともあって,アジャイル開発手法が一大ムーブメントになりつつあるという。日本でも「J2EE(Java2 Platform, Enterprise Edition)に準拠したオブジェクト指向開発が進展したり,短期開発に対するニーズが高まってきたことで,企業がアジャイル開発手法を導入する素地ができた」(山田氏)。

 山田氏は,SRAとソニーコンピュータサイエンス研究所を経て,1995年にメタボリックスを設立。オブジェクト指向開発やソフトウエア開発プロセス,UML(ユニファイド・モデリング・ランゲージ)に関するコンサルティングを手がけている。XPが登場した3年ほど前にアジャイル開発手法の存在を知り,コンサルティングに取り入れてきた。

 山田氏は「チームを組み,オブジェクト指向でソフトを開発しようとすると,自然にアジャイル開発手法のようなアプローチになる。自分の経験に照らしてみると,この開発手法の良さが分かるし,効果も実感している」と話す。「これまで場当たり的にシステム開発に取り組んでいたベンダーに対して,アジャイル開発手法を取り入れるように勧めたところ,開発期間が短くなったり,予算オーバーがなくなるなど,顕著な効果が表れた」(山田氏)という。

 アジャイル開発手法のうち,よくXPと組み合わせて使われることで知られるScrumについて紹介しよう。Scrumの語源はラグビーの「スクラム」。山田氏が「体育会系的な手法」と呼ぶScrumの特徴は,「スクラム・マスター」と呼ぶコーチ役の存在と,開発期間を区切ることである。

 Scrumではまず,開発期間を30日ごとに区切る。個々の区切りを「スプリント」と呼ぶ。一つのスプリント中に,実際に動作するプログラムを作るようにスケジュールを組む。これを繰り返すことで,必要なすべての機能を実装していく。各スプリントの最後には,それまでの成果をユーザーに見せたり,開発メンバー同士で成果の意義を確認する。

 スプリント中は必ず,毎日同じ時間にチーム全員が集まる「スクラム・ミーティング」を実施する。ミーティングの所要時間は15分程度が目安。スクラム・マスターはメンバー一人ひとりに対して,「前回のミーティング以降の成果」,「次回のミーティングまでの計画」,「開発過程で困っていること」の三つを質問し,確認する。これにより,スクラム・マスターはプロジェクトの進ちょく状況や現在の問題点を把握できる。

 アジャイル開発手法を適用する際に注意すべき点について,山田氏は次のように説明する,「XPやScrumは確かによい手法だが,決して万能ではない。個々のプロジェクトにどう適用すればよいかを,しっかり考えながら取り組むべきだ。メンバーやチームの性格,プロジェクトの性質などに合わせてアジャイル開発手法を使わないと,メリットを享受できない」。

 山田氏は,国内にいる賛同者と協力しながら,米国で出版されたアジャイル開発手法に関する書籍の翻訳を進めているという。さらに,Webサイト(http://www.metabolics.co.jp/XP/)を通じてXPやScrumを紹介することに加え,「当社のコンサルティング活動や,賛同者と共同で開催するセミナーなどによって,アジャイル開発手法を日本の開発者に向けて積極的に広めていきたい」(山田氏)としている。

高下 義弘=日経コンピュータ