「以前から,IETFの国際会議を日本で開催したいと考えていた。実際に開催してみて,日本のエンジニアには刺激を与えることができたのではないか。これを機会に,日本のエンジニアがインターネットの技術に対して自信を持つきっかけになればいいと考えている」。日本のインターネット技術を牽引してきたWIDE Projectの村井純代表は7月19日,「第54回IETF 横浜会議」を総括する記者懇親会でこう話した。

 IETFの国際会議とは,TCP/IPやIPv6をはじめとするインターネット・プロトコル(IP)の標準仕様を決めるもの。IPの標準化を策定する国際組織IETF(Internet Engineering Task Force)が主催して,1年間に3回開催する会議だ。IETFで策定された標準仕様はRFC(Request for Comments)に反映される。

 1986年から始まったこの国際会議が,アジアで開かれるのは今回の横浜会議が初めて。村井代表はその効果を,次のように話す。「最大のメリットは,IETF国際会議に対する“しきい”が下がったこと。日本からは840人が参加した。海外で開催した場合には,せいぜい300人を超える程度。それだけ多くの人が会議に参加できたのも,日本国内で開催したからだ」。日本開催のタイミングも良かったと胸を張る。「今回の議題の中心は日本が力を入れてきたIPv6だったので,日本の技術者がさまざまな意見を発表できた」。

 パシフィコ横浜で7月14日から6日間にわたり開催された横浜会議には,世界30数カ国から約2000人の研究者や技術者が参加した。「韓国からの参加者が140人と,想定よりも多く,いい意味で驚いている。中国も含めて,アジア勢の力はインターネットの世界で確実に強まっている」(村井代表)。

 WIDE Projectは国際会議の開催期間中,パシフィコ横浜や隣接するヨコハマ グランドインターコンチネンタルホテルに,IPv4とIPv6の両方が使える無線LAN環境を用意した。「会議の参加者は,インターネットの接続環境がないと“窒息”するような人たち。だからこそ,スポンサーである富士通と協力して,無線LANの環境を自分たちで設置した。参加者の87%に当たる1650人が無線LANを経由してインターネットを利用した。これだけの人が一つのエリアで同時に無線LANを使ったのは,世界で初めてだろう」(村井代表)。

(大和田 尚孝=日経コンピュータ)