年率30%の勢いで急成長を遂げる中国ソフトウエア産業の業界団体,中国ソフトウエア産業協会(CSIA)の陳冲(チェン・チョン)理事長にインタビューした。陳理事長は,中国情報産業部(省)電子情報産品管理司の副司長も務める中央政府の役人でもある。今後の成長戦略と日本との関係を聞いた。

-急成長に湧く中国ソフト産業ですが,今後の成長戦略を教えてください

 2005年までに体系だった具体的な施策を実行し,ソフト産業をさらに強化する計画を立てている。昨年6月,中国政府は「ソフト産業と集積回路産業の発展を奨励するための政策」という通称「18号文書」を全国自治政府に頒布した。国内市場と国際市場両方に目を向けながら,人材育成と国産ソフトの開発に力点を置き,2005年までに2500億元(1元=16円換算で4兆円)の産業規模,20億ドルのソフト輸出額,100以上のソフトウエア・ブランドの創造,80万人の開発要員を目標とする内容だ。

 具体的には,高度な人材育成はソフトウエア専門大学で取り組んでいる。すでに全国に30以上のソフト専門大学が設置されている。2002年は全国でソフト専門大学の生徒を2万人募集している。2005年には専門的な訓練を受けたソフト技術者が3万人が卒業し,そのうち約半数がソフト産業に従事すると見ている。

 また製品面では,Linuxをベースにした国産OSの開発を支援する。我が国の発展に合ったシステマチックなOS,ならびにアプリケーションの開発が急務だと考えている。Linuxはソースコード・フリーで先進性がある。ユーザーは自由にカスタマイズすることができる。商用ソフトのあり方に大きな衝撃をもたらすだろう。我が国の電子政府では,この国産OSを使う考えだ。

-CSIAは日本との協力関係を深めるために,何ができますか

 現状,日中のソフト交流は,中国が日本向けのプログラミングや単体テストといった下流工程を担当する,単なる加工貿易の側面が大きい。しかし,これからは基幹システムを中国で開発し,それを両国の大企業で使うといった協業もしていきたい。我々はもっと付加価値の高いソフト開発ができる。共通のパーツをつかったシステムを日中両国で使用するなど,グローバルな発想が求められる。

 大連はソフト産業の成長が著しい。とくに日本向けソフト開発は全国でトップクラスの実績を出している。大連市政府が全力でソフト会社と一体となり,人材育成や優遇政策,投資などをしてソフト産業育成に取り組んだ結果だ。しかし中国全土で見ればまだまだ。CSIAは全国組織なので,こうした大連モデルを北京や上海といった大都市をはじめ中国全土へ展開したい。

-中国のソフト産業にとって,米国と日本どちらが大切なパートナだと思いますか

 今まで北京や上海は,意識的に米国を重視していたわけではない。米国企業から多くの受注を頂いたので,自然と欧米に目が向き,お付き合いが深くなっているだけだ。しかし最近は日本との交流が深い大連の方がソフト会社の成長が著しい。これを見て,米国不況のあおりをうけて受注が減っている北京や上海のソフト会社は焦っており,かなり日本を意識している。

 米国はOSやミドルウエアが強い。でも業務アプリケーションでは米国は弱い。例えば米IBMが担当した北京のある電子政府プロジェクトは,最初は全部IBMが作ったと思っていたが,後から聞くと,アプリケーションのほとんどは下請けについた北京のソフト会社がつくったと聞いた。一方,日本は巨大銀行システムなど業務アプリケーションは得意だ。それぞれの得意なところと組んでいけば良いと思う。

-中国ソフト産業の発展は著しいですが,日本のソフト産業は中国シフトが進むことによる空洞化が懸念されています

 中国は改革開放政策のもとで先進国を手本に勉強し,産業の育成・発展に努めてきた結果,ソフト産業も急成長している。しかし問題は急成長しすぎて産業全体が浮き足立っていること。他方,日本は地道にコツコツと産業を育成してきた結果,非常に安定している。日中両国は互いに良いところを補いながら共存共栄できるものと信じている。

 日本のすばらしいところは,しっかりとした産業の基礎を築き,安定している点だ。しかし時と共に進歩することが大事。世の中は刻々と変化している。いまの日本のIT産業は,それについていけてない印象を受ける。業界全体が反省し,グローバルで求められる姿を考えれば,ともに成長を続けることができる。

(聞き手は井上 理=日経コンピュータ・大連)