中堅インテグレータのSRAは8月29日,ソフトウエア開発における協力で中国・大連市情報産業局と提携した。SRAは10月に中国担当の専任部署を設け,中国ビジネスの内容を詰めるとしている。現在あがっている検討課題として,大連市から紹介を受けたソフト会社に開発業務を委託する,大連市と共同で日本向けソフト開発技術者の養成学校を設立する,などがあるという。

 SRAの渡辺肇取締役兼マーケティングカンパニー プレジデントは今回の提携を受けて,「これまで会社と会社の提携はあったが,大連市政府と日本企業の提携は知る限りこれが初めてで画期的。中国でのあらゆるビジネスで大連市政府からの協力を得られる意義は大きい」と語る。大連市情報産業局の楊白新副局長も「SRAに全面的な協力をする」と約束した。

 しかし,現段階では今回の提携によるSRAのメリットは見えていない。そもそもSRAは,中国進出では日本のインテグレータとして最後発の部類に属しているにもかかわらず,「いつ,どこと,何をするのか」という今後の具体的な計画さえ何も決まっていない。

 SRAは「大連市から紹介を受けたソフト会社なら信用できる」(渡辺取締役)とするが,「信用できる」のと「開発がうまくいく」のは別次元の話であり,「うまくいく」保証は何もない。渡辺取締役は「実際に大連のソフト会社数社と具体的な交渉を進めている」と語った。しかし日経コンピュータの調べによると,そのうちの1社は日本向けソフト開発事業を黒字化できておらず,ほかの提携先日本企業とのプロジェクトは難航している。

 日本向けソフト開発技術者の養成学校も,投資対効果があるのか,大連市のやる気が本当にあるのか,はなはだ疑問である。すでに大連市の全面的な協力を得て,中国ソフト最大手の東軟集団とその母体である中国東北大学,そして大連ソフトウエアパークの3者が昨年9月,ソフトウエア専門大学「東北大学東軟情報技術学院」を大連市に開校したばかり。

 同大学は,東軟集団のほか,オラクルやサン・マイクロシステムズ,シスコシステムズなど全世界のIT企業から強力な支援を受けており,約8000人の学生を抱えるマンモス校だ。もちろん日本語教育も充実しており,東軟集団が東芝やNECなど日本の大手数十社を巻き込んだ大規模なソフトウエアパークへ卒業生を供給する役割も担う。そこへSRAが乗り込み学校を作ったとて,規模や教育の質で上回ることができるのか疑問だ。

 今回の提携を取り仕切る渡辺取締役は,先日SRAが買収したターボリナックス日本法人の代表取締役会長兼CEOでもある。「中国もLinuxも私が関係している。碁石と一緒で,双方がどこかでぶつかる可能性はある」と,中国でのLinux事業も臭わせた。

 しかし,中国情報産業部(省)電子情報産品管理司の副司長も務める中国ソフトウエア産業協会の陳冲理事長は日経コンピュータとのインタビューで,「課題は中国産ソフトの市場占有率が40%以下と低いこと。Linuxをベースにした国産OSの開発を支援し,中国の電子政府ではこの国産OSを使う考えだ」と明言している。こうした政策下で,日本の会社のLinux事業が成功するとも思えない。

 大連市関係者は記者に対し「大連市にとって今回の提携は,単に一つの日本企業の誘致が成功しただけにすぎない。具体策は何もないが,SRAが大連市に来てくれることは決まった。それだけで大連市にはメリットがある」と語った。

井上 理=日経コンピュータ