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 「社内方針として、コスト削減をシステム・アウトソーシングの第一目標にしたわけではない」。油圧機器メーカー大手であるカヤバ工業の金子佳弘 IT企画部専任課長はこう説明する。カヤバ工業は今年5月1日にシステム企画を除く、システム開発・保守・運用業務を日本IBMに全面アウトソーシングした。

 カヤバ工業はアウトソーシングを機に、それまでの情報システム部員約50人を日本IBMの子会社である日本アイビーエム中部ソリューションに出向させた。ただし、出向した50人を出向先に転籍することは「今後も考えていない」(金子専任課長)。アウトソーシング期間は10年で、契約は1年ごとに更新する。契約金額やそれまでのシステム関連予算は一切公開していない。カヤバ工業本体にはIT企画部を設置し、情報システム部門出身の5人を配属した。

 では、カヤバ工業はアウトソーシングで何を狙ったのか。「技術の進歩についていくことだ」と金子専任課長は明かす。「部員の平均年齢が40歳を超え、このままでは時代についていけなくなるという危機感があった」(金子専任課長)。しかも不況のあおりを受け、システム部門に若手を増員することはほとんど不可能になっていた。「今後はIBMの技術やノウハウを積極的に吸収していきたい。IBMの技術やノウハウによって開発効率が上がれば間接的にコスト削減効果はあるかもしれない。しかし、それが第一義ではない」(同)。

 アウトソーシングするにあたり、同社が最も気を付けたのはエンドユーザーとの関係をこれまでと変えないようにすることだ。システム部員のほとんどは全国の工場に常駐しており、ユーザーとの距離が非常に近い。「アウトソーシングをしたことで、システム部員と話をしにくくなったとユーザーから言われないように心がけた」(金子専任課長)。アウトソーシング後も、基本的に出向者は同じ勤務地の同じ机で仕事をしている。「名刺が変わっただけという状況にした」(同)。

 金子専任課長は、今後の課題を「本体に残ったIT企画部の存在意義を明確にすること」だと考えている。「社内と日本IBMをつなぐ組織として双方から信頼されなければ、本体に残った意味がない」(金子専任課長)。長期的には、IT企画部員がシステム開発の現場から離れてしまうことで、システム開発の“感覚”を失ってしまわないようにする。例えば、IT企画部と出向者の間での人事ローテーションを考えている。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ