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 「日本、中国、韓国のソフト業界団体と政府が、Linuxをベースにした次世代OSとアプリケーションの開発・普及を目的に手を組む」――。日経コンピュータ1月27日号で既報の構想(「次世代OSで日中韓が“三国同盟”」)が、いよいよ本格化する。3カ国の官民が一体となって、欧米に大きく遅れをとるアジアのソフト産業の振興を狙う。

 この報道時は日本政府の立場が明確ではなかったが、経産省はこのたび、オープン・ソース・ソフトウエア(OSS)に取り組む3カ国の産業界を日本政府として正式に支援していくことを決めた。日本政府は、OSSに取り組む国内企業の取りまとめや、OSSのコミュニティ支援などで取得した今年度予算10億円の一部の捻出といった形で、支援をしていく。

 9月3日にカンボジア・プノンペンで開かれる日中韓経済相会合で、平沼赳夫経済産業相が「日本、中国、韓国の官民が、OSSの共同開発や普及に向けて協力する」ことを提案、これを受けて9月中旬には、ソウルで局長級の3カ国協議を行い、正式合意に至る見通し。この場で、3カ国の産業界で構成する「OSS推進協議会」の内容を詰め、11月にもOSS推進協議会が発足する。

 日本からは、情報サービス産業協会(JISA)や、NTTデータ、NEC、富士通、日立製作所といった大手ベンダーがOSS推進協議会に参加する予定。中国からは中国ソフトウエア産業協会(CSIA)をはじめ、中国産のLinuxディストリビューションである「赤旗Linux」のメーカー、中科紅旗軟件技術有限公司などが、韓国からは韓国情報産業連合会(FKII)やサムスン・グループなどが参加すると見られる。

 今回日本政府が、OSSに関して中国政府と協調を図っていく合意を事務レベルで取り付けることができた意義は大きい。中国政府は国産の赤旗Linuxを政府内に展開していくと公言しているが、赤旗Linuxの実力や政府内導入の実態は未知である。「中国の赤旗Linuxは、本当にGNU GPL(GNU General Public License)を遵守しているのかどうかも分からないので、まずはお互いのOSSへの取り組みを知ることから始める」(経産省関係者)。

 ただし、今回はあくまで「OSSに関する民間レベルの協業を、3カ国の政府が資金や政治面で後方支援する」ということが決まっただけ。3カ国の産業界が集まって何をするのか、誰が何をやるのか、いつまでに何を決めるのか、といった具体的な活動内容は、今年1月の日経コンピュータでの報道時と同様、何も決まっていないのが現状である。

 構想だけの“打ち上げ花火”に終わらせないためには、まず、三国同盟のなかで日本の産業界が担うべき役割、あるいは日本の産業界にどんなメリットがあるのか、などを早急に整理する必要がある。

(井上 理=日経コンピュータ)