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 2003年5月まで米ジョージア州でCIO(最高情報責任者)を務めていたラリー・シンガー氏(写真)が本誌記者と会見、「日本の電子自治体担当者は、まずアーキテクチャを決めてからシステムを構築すべき」と提言した。さらに「きちんとしたアーキテクチャを考えるには、システム全体のライフサイクルを見通さなければならない」と指摘、単年度ごとに計画を立てる体制はその障害になると述べた。同氏は、岐阜県高山市で開かれている「第3回全国電子自治体会議」(11月6日~7日)で講演するために来日した。現在は、サン・マイクロシステムズのグローバル マーケット ストラテジー担当副社長である。

 同氏のいうアーキテクチャとは、業務とシステムを最適化するためのEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)である。ROI(投資対効果)や業務プロセスを考えるビジネス・アーキテクチャ、データ・アーキテクチャ、アプリケーション・アーキテクチャ、ネットワークやハードウエアを最適化するテクノロジ・アーキテクチャなどを考慮することで、システム連携やシステムの再利用が容易になり、ジョージア州で効率良く情報化できたとする。

 シンガー氏は2000年にCIOに着任してから、それまで孤立していた各業務アプリケーションをつなげる作業に注力した。メタ・データ(データの仕様や処理手続きなどを記述したデータ)を規定し、データ仕様が異なり孤立していたシステム間を、システム基盤やWebサービス技術を利用しながら連携させた。ネットワーク仕様の標準化やサーバー統合の権限をCIOに集中させ、部局ごとに管理していたネットワークやシステムを刷新しながら進めた。

 ジョージア州では、「既得権限をすぐには手放そうとはしない部局が少なくなかった。部局は縦割りになっていて、大局的な見方ができる人はいなかった。部局間の壁を崩すのは困難だった」(シンガー氏)。すなわちCIOに権限を集中させるだけでは、システムに関することでも現場を動かすのは困難だった。結局は「業務部門が納得するように知恵を出し、情報システム部門と業務部門がパートナーシップを結べるようにするしかない」(同氏)という。

 パートナーシップの成功例として、現場が抱えていた問題を情報化で解決した案件をラリー氏は挙げる。恵まれない人の相談にのるケースワーカーの多くは、給料が安いために短期間で退職する、という問題にジョージア州は悩まされていた。そこでラリー氏はITを利用して、ケースワーカーの給料を上げる提案をした。それまでケースワーカー3人につき1人のデータ入力事務員がいた。そこで情報システム部門はケースワーカーが容易に直接データ入力できるシステムを構築し、ケースワーカー12人につきデータ入力事務員1人の割合に変え、事務員を減らした。それを原資にケースワーカーの給料を上げた。

(安保 秀雄=日経コンピュータ)