PR

 「両社にとって非常に大きなメリットをもたらす」。富士通の黒川博昭社長は6月2日、米サン・マイクロシステムズとの提供強化を発表する席で、こう強調した。この発表はUNIXサーバー事業に関する提携範囲を拡大し、両社のサーバー製品を統合するというもの。今後両社はSPARC/SolarisアーキテクチャのUNIXサーバー製品を共同開発し、2006年半ば以降両社共通の製品として全世界で提供する。これにより、これまで富士通が「PRIMEPOWER」、サンが「Sun Fire」の名称で開発・販売してきたSPARC/Solarisサーバーが、ようやく一本化されることになる。

 今回の提携拡大で、サンはサーバーの開発を富士通に大きく依存することになった。サンでは4月にソフトウエア担当上級副社長のジョナサン・シュワルツ氏が社長兼COOに就任したことからもわかるように、「ソフト会社」の色を強めている。提携拡大により、いっそうその傾向が鮮明になった。

 富士通とサンは「Advanced Product Line(APL)」のコード名で、共通サーバーを開発する。高性能機(ハイエンド)から低価格機(ローエンド)まで、すべてを共通化する。実際の製品名は未定だが、共通の製品名の前に、販売チャネルに応じて企業名を先頭に冠したものになる見込み。

 最終製品の組み立てや販売は「グローバルに展開する都合上、地域によって分担を変える」(前山淳次専務)。例えば日本は富士通、北米はサン、欧州は富士通シーメンス・コンピューターズ、といった具合だ。「その地域によって一番コスト効果の高いやり方を選択する」(同)。ハイエンド・サーバーは、既存の高性能機であるPRIMEPOWERで実績を作ってきた富士通グループの担当範囲が大きくなる模様である。

 共通サーバーに搭載するプロセサのうちハイエンド/ミッドレンジ・サーバー向けは、富士通が開発・製造する。富士通が2005年後半に提供予定のSPARCアーキテクチャの次世代プロセサ「Sparc64 VI」を使用する見通しである。

 サンはハイエンド・サーバー向けの高性能プロセサの開発から事実上撤退する。ただし、ローエンド・サーバー向けプロセサの開発は継続する。最初のローエンド共通機には、サンが2005~2006年の量産を目指して開発中の「Niagara(ナイアガラ:開発コード名)」を使う模様。このプロセサの製造は、これまで通り米テキサス・インスツルメンツが担当する。

 OSであるSolarisはこれまで通りサンがほぼ全権を握り開発を進める。「ハードの富士通、ソフトのサンという両社の強みを生かす」(前山専務)。OSの一部の機能については、「富士通がメインフレームのノウハウを提供する」(同)という。

開発コストの削減が最大の狙い

 今回の提携拡大は、富士通とサンの両社にとってサーバー開発コストを削減できるメリットがある。富士通の黒川社長は「製品を統一することのコスト削減効果は、両社にとって非常に大きい」と語る。サン日本法人のダン・ミラー社長も、「非常にエキサイティングな提携拡大だ」と興奮を隠さない。

 富士通はプロセサも含めて、サン互換機を自社開発している。富士通のPRIMEPOWERはハイエンドに的を絞った製品であるものの、両社はSPARC/SolarisベースのUNIXサーバーの開発に重複投資をしてきたと言える。

 ここ1~2年でサーバー・ハードの価格は急落しており、富士通やサンだけでなく、世界の各ベンダーは利益確保に苦労している。「特にプロセサの開発費用の負担は大きい」(前山専務)。富士通とサン双方にとって、開発コストの削減効果は見逃せない。特にサンにとって今回の提携拡大は、赤字基調を脱するためのバネになり得る。サンは2002年6月期と2003年6月期、それぞれ5億8700万ドル、23億7800万ドルの赤字に終わっている。

 さらに富士通は提携拡大で世界市場でのシェア拡大を狙う。世界で展開する“サン製品”の提供に開発ベンダーとして関与することで、売り上げ増を期待する。

 前山専務は「富士通のSolarisサーバーの世界シェアは10%以下。今回の提携で、このシェアを伸ばすことができる」と期待を寄せる。かねてより「プラットフォーム(ハード/ソフトの開発販売事業)で世界に打って出る」と宣言している黒川社長は、「(提携拡大は)グローバル戦略の一つ」と語る。

 今回の提携拡大の発表は、かねてより業界でささやかれてきた話がようやく表に現れたもの。昨年10月23日に「UNIXサーバー事業の統合で両社が合意」という新聞報道が出た。当時富士通はこの報道について否定も肯定もしていなかった。

高下 義弘=日経コンピュータ