「あるシステムが持つデータと別システムのデータをつき合わせてみると同じデータのはずなのに数字が合わない――。最近の企業では、このようなことが頻繁に起きている。つまり、企業情報システム全体をみると情報の信頼性が落ちている」。データ総研コンサルティング・グループの堀越雅朗氏はこう指摘する。

 データの信頼性が低下しているのは、複数のシステムが似たようなデータを個別に管理しているためだ。「1990年代以降、このような状況が企業内のシステムで多く見られるようになった。これは業務に必要な画面を出力するプログラムを作る際、必要なデータをプログラムごとに作成してきたことが原因。そのため、別のプログラムに似たようなデータが存在するようになった。こうなると、データを分析しようとして、各プログラムが使うデータを集めるときに、どのデータが正しいのかわからなくなってしまう」(堀越氏)。

 このような事態を避けるため、「ヒト、モノといった企業の資源となる情報は、個別システムに紛れ込ますことなく、一元管理すべきだ」と強調する。「ヒト、モノといったデータを一元管理し、そのデータから受注、発注といった業務に必要なデータを作成する。そして画面用のプログラムはそれらのデータを表示する。このようにデータとプログラムを整理することで、同じはずのデータがシステムによって違ってしまうといった事態を回避できる」と、堀越氏は強調する。

 堀越氏は、ソフトウエア・エンジニアリング普及団体のひとつ、DOA+コンソーシアムが6月28日に開催したDOA(データ中心アプローチ)の初心者向けセミナーで以上のことを指摘した。DOAとは、システムで扱うデータ項目やその流れの分析に重点をおいて、システム分析・設計作業を進める方法。「『DOAはメインフレーム向けの技術』といった誤解が技術者の中にはあるようだ。DOAがいまでも有効だと発信できればと考え、DOAを詳しく知らない技術者を対象にコンソーシアムで企画した」と同コンソーシアムに参加する堀越氏は説明する。セミナーには約150人の技術者が参加した。

 今回の講座では、DOAを使ってシステムを開発する際の手順と、作成する図に関する解説もあった。開発手順を解説したシーエーシー コンサルティングビジネスユニット ビジネス戦略オフィスの真野正氏は、「業務でどのようなデータを扱うかを図で示すと、『商品の受注のあと入金管理をする』といった業務の流れをつかめる。どのデータがどのようなデータに加工されているかといった処理もわかるため、プログラム作りにも役立つ」と説明する。

 ケン・システムコンサルティング 技術サポート部の本村智之氏は、THデータモデル、T字形ER図、UML(統一モデリング言語)といった、データ・モデリングで利用される図の表記法や分析手法について説明した。説明の中で、本村氏は「業務処理やデータが現実の業務でどう使われているかを示すモデルをまとめることは、システム分析・設計には非常に重要だ」と強調した。DOA+コンソーシアムでは今後も、DOAに関するセミナーを今後も実施する予定。7月14日に、DOAとオブジェクト指向に関するセミナーを開催する。

(西村 崇=日経コンピュータ)