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 「要件定義の品質を上げたければ、現場から上がってくる生データを基に、業務/システム設計における「課題抽出」と「課題解決」の進捗を管理すべき」。IBM ビジネスコンサルティング サービスの加茂義一アソシエイト・パートナーは、こう断言する。加茂氏は、今年4月に完了した「JAL/JASシステム統合」(関連記事12)を成功に導いた立役者の一人。同プロジェクトには開発標準リーダーとして参加し、日本IBMのプロジェクトマネジメント・システム(PMS)を徹底活用して、2年半にわたる統合プロジェクトを支えた。

 システム開発で失敗する典型的なパターンの一つは、要件定義の詰めが甘く、詳細設計や開発フェーズで要件に変更や追加が頻繁に起きて大きな手戻りが発生するというもの。プロジェクト・マネジャが、「要件定義完了」の判断を誤ると、このような事態に陥る。

 では、要件定義の進捗はどのように考えればよいのか。加茂氏は、「課題抽出・解決の進捗を追えば、要件定義の進捗が見える」とアドバイスする。「課題をいかに早く出し尽くし、その解決のスピードをいかに上げるかで要件定義の品質が決まる」というわけだ。

 難しいのは、課題が出尽くしたかどうか、解決は順調に進んでいるかどうかを、どう判断するか。この点について加茂氏は、「各プロジェクト・チームの自己申告などを基にするのは危険。リーダーの主観的な判断といったフィルタリングがかかるため、問題が表面化しないからだ」と語る。「課題の抽出数、解決した課題の数といった現場の生のデータを集計し、可視化すれば、問題点があぶり出されてくる」(加茂氏)。

 JAL/JASシステム統合では、PMSが可視化を担った。実際、PMSで要件定義の課題をいくつも発見したという。「要件定義は問題ないというチームがあったが、そのチームが抽出した課題の数は、他のチームに比べて圧倒的に少なかった。調べてみると、課題抽出が進んでいなかった」(同)。また、抽出数グラフの曲線を見ると、課題が出尽くしたかどうかも判断できる。

 大きな課題、共通課題から解決に当たり、未解決の課題は一覧してプロジェクト・メンバー全員で共有する。課題解決の責任者(課題オーナー)を決め、毎週、課題解決に対して行った内容をモニタリングする。それらが課題解決のスピードアップにつながる。

 もちろん、PMSは要件定義フェーズの進捗だけを可視化するわけではない。外部設計から統合テスト、システム・テストまでプロジェクト全体の状況を明らかにする。成果物の出来上がりも一元管理し、例えば「承認者の人数が少ないために、承認ボトルネック」が起きているなども一目瞭然になる。

 「現場の生データが、プロジェクトの危機を教えてくれる」。1万2000人月にも及んだJAL/JASシステム統合プロジェクトで、加茂氏は実感したという。

小原 忍=日経コンピュータ