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 「81年に登場した最初のパソコン(IBM PC)は、現在とはまったく異なるシステムだった。その後、より高度なプロセサ、バス、OSが登場したのにもかかわらず、BIOS(Basic Input Output Software=基本入出力ソフト)だけは最初から変わっていない」。米インテルのソフトウエア製品事業部のヨシ・ゴヴェゼンスキ氏はこう力説する。「その結果、パソコンのBIOSはRISCシステムに大きく遅れをとってしまった。今こそ古いBIOSに基づくアーキテクチャを捨て去り、新しいファームウエアに移行すべきだ」と、同社が提唱する新しいファームウエア体系「EFI(Extensible Firmware Interface」の採用を訴える。IBM PCを開発した米IBMがパソコン事業を中国・聯想集団(Lenovo Group)に売却することを正式発表した時期だけに、インテルの呼びかけは感慨深い。

 インテルが指摘するように、IBM PCに由来する現行BIOSは数多くの限界を抱えている。例えば、プログラムがx86プロサセのリアル(16ビット)モードで動作するため、(1)コード実行が遅く起動に時間がかかるし、(2)コードとスタック(作業領域)の最大容量が1Mバイトで機能拡張の余地がない、(3)ユーザー・インタフェースは文字中心で旧態依然としており、操作性が悪い――などだ。こうした問題を解消するため、インテルはBIOS後継の新ファームウエア「EFI」を策定した。

 EFIの特徴は、モジュラ構造を採用したこと。ファームウエアをハードウエアを制御する部分とOSを含むソフトウエアとのやり取りをつかさどる部分に分け、自由に組み合わせられるようにした。これにより新しい周辺機器などへの対応が迅速にできるし、モジュールごとにファームウエアをアップデートすることも可能になる。古いハードウエア(PC ATバスなど)の検査などを省いて起動を高速にすることもできる。EFIのファームウエアはプロセサのネイティブ・モードで機能するので、起動自体も高速になる。GUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)の設定画面を用意すれば操作性も向上する。
 
 インテルはパソコン・メーカーはもちろん、米インサイドや米AMIといった既存BIOSを開発するソフト・ベンダー、マイクロソフトをはじめとするOSの開発ベンダーに採用を呼びかける。「Foundationコード」と呼ぶファームウエアの中核部分はオープンソースとしてEFIの普及促進団体が管理することにし、インテル色をできるだけ消した。当初はPentium4/Celeronなどのインテル製32ビット・プロセサ(IA-32)、64ビット・プロセサ(IA-64)のItanium、携帯機器向けのXScaleプロセサを対象にするが、インテル製以外のプロセサにも対応を促す。

 インテルは2005年以降、自社製マザーボードやチップセットをEFI対応にし、EFIへの移行を加速させる。Foundationコードとドライバの開発キットの提供を2004年内に始める。12月9日には、都内にパソコン・メーカーや周辺機器メーカーの技術者70人ほどを集め、講習会を実施した。「EFIへの移行が数年がかりになることは覚悟している。要望がある限り、既存BIOSのサポートもやめない」(ゴヴェゼンスキ氏)とする。

 EFIは既存BIOSとまったく同じ機能を提供するので、今のパソコン用OSはそのまま動く。ただし、EFIのメリットを生かすにはOSの変更が必要になる。すでにItanium用OSはEFIに変更済み。32ビット・プロセサ向けでは、Linuxがカーネル2.6.1でEFIに対応する。マイクロソフトは2006年以降に登場する次期Windows(開発コード名はLonghorn)でEFIに対応する予定。 

星野 友彦=日経コンピュータ