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 富士通は5月25日、2005年度の経営方針を発表した。まず黒川社長は冒頭で昨年度の取り組みを振り返り、昨年度決算で当初の目標に届かなかった理由を説明した(参考記事)。

 目標未達の主な理由は、決算発表でも説明したように、システム構築(SI)を手がけるソフト・サービス事業の低迷。富士通は当初、連結で2000億円の営業利益を見込んでいた。最終的には1601億円に終わったが、大きいのがソフト・サービス事業の未達分。当初の見込みに570億円分届かなかった。うち400億円が、不採算プロジェクトの損失拡大によるものだった。

 期中にこれらの額が膨らみ、度重なる決算の下方修正につながった。「03年度の時点でできる限り不採算案件を洗い出したが、その後さらに件数が積み上がった。正直、認識していなかった。これらの積み上げができなかったわけではなかった。社員の誤解などで(申告が)漏れたことがあると思う。SEや営業の“最後までがんばる”という考え方が影響したのではないか」と黒川社長は説明する。

 富士通によると、昨年度中の不採算プロジェクトは135件。うち22件で、SI事業全体における損失額の80%を占めていたという。これらの案件は主に、富士通の業績が低迷していた2~3年前に獲得したもの。設計・開発工程での採算性を意識せず、営業部門が“無理して”獲得した案件である。黒川社長は「昨年度の終わりで(不採算プロジェクト)全体の75%は片づいた。残り25%は、今年度と来年度で収束する」としている。

 また黒川社長は、昨年度に実施した営業とSI部隊の一体化、そして商談の精査という一連の体制改革(SBR=Solution Business Restructuring)の効果を強調する。「不採算案件の発生をかなり止められるようになってきた」(黒川社長)。富士通によると、不採算案件の売上高は、SBRの前は203億円。SBR後は10億円と大きく低下。原価率については、SBR前後で414%から130%に下がった。通常案件の原価率は、85%から77%に低下した。「私が2003年6月に社長に就任した時と比べて、(SI事業は)確実に強くなっていると思う」(同)。

 黒川社長は昨年5月に発表した経営方針(参考記事)で、2006年度に連結で営業利益3000億円、純利益1000億円という目標を掲げた。これについて黒川社長は「価格の下落が厳しく、コスト削減策を超える下げ幅。2006年度での達成は無理だろう」とコメントした。

 富士通は2005年度の連結見通しとして、売上高が4兆8500億円、営業利益で1750億円、純利益で500億円を見込んでいる。黒川社長は営業利益の見通し1750億円について、「この数値は、決して上が現場に押しつけたわけではない。各ビジネス・ユニットから申告された数字を積み上げた。この点でも富士通は変わってきた」と語る。かつて同社は、「経営陣の“願望”に近い目標数値を、無理やり現場に割り振っている」と指摘されていた。


新規事業の狙いを「現場を改革するビジネス」に定める

 黒川社長は2005年度の取り組みのポイントを大きく二つ挙げる。新規事業の創出と体質強化である。

 まず新規事業の方向性について黒川社長はいくつか掲げているが、特に強調したのは「フィールド・イノベーション」という考え方。生産や物流、サービスといった実作業の現場を支援するシステム構築に力点を置き、システム構築の需要を掘り起こす。

 黒川社長は「これまではバックオフィス系のITが中心だったが、企業の現場を改革するITで、ビジネス規模を拡大したい」と語る。「これらのシステム構築にはICタグや情報端末など、ハードをうまく組み合わせる必要がある。ここに富士通のリソースが生きてくる」。

 また体質強化については、昨年度まで取り組んできた組織改革や生産現場でのコスト削減策を継続して実施する。

高下 義弘=日経コンピュータ