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 日本AMDは6月30日付で、インテル日本法人に対し、2件の損害賠償訴訟を提起した。AMDによると提訴の内容はそれぞれ、(1)今年3月に公正取引委員会が行い、インテルが応諾した排除勧告に基づくパソコン・メーカー5社への排除行為、(2)排除勧告に含まれなかったAMDに対する営業妨害行為、に対するものだ。損害賠償請求額は5500万ドル(約60億円)である。

 今回の訴訟に先立つ6月27日(現地時間)に、AMDは米国でもインテルを独占禁止法違反で提訴している。日本AMDの吉沢俊介取締役(写真)に、提訴の狙いを聞いた。

――日米で同時にインテルを提訴した。狙いは何か。

 まず申し上げたいのは、今回の訴訟は、世界規模でインテルが行っている独占的地位を乱用する行為に対するものだということだ。米国や日本だけでなく、ヨーロッパや台湾でも、インテルは同様な行為を行っている。

 米国以外では日本だけで訴訟を起こした大きな理由は、今年3月に出された公正取引委員会の排除勧告だ。インテルは排除勧告を応諾した。つまり自らの不法行為を認めたわけだ。そこでインテルの排除行為によって当社が被った損害を取り戻すべく、訴訟に踏み切った。

――AMDのビジネスだけのためか。

 それだけではない。パソコン・メーカーの声に出せない窮状を代弁し、インテルの不法行為に歯止めをかけ、パソコン市場に自由な競争状態を取り戻すことも、訴訟を起こした狙いの一つだ。パソコン・メーカーはどこも、インテルに不満を抱いている。パソコン事業はただでさえ利幅が薄い上に、値段が高止まりしているインテル製品を使わざるを得ないおかげで、さらに利益を圧迫されているからだ。

 参考までに言うと、総売上高に占める営業利益の割合は、インテルは40%を超える。当社は5%以下、パソコン・メーカーも軒並み数%、あるいは赤字だ。インテルが本当にリーズナブルな価格設定をしているなら、なぜこんな異常な利益を上げられるのだろうか。

 パソコン・メーカーはインテルの“圧力”のせいで、表立ってインテルを批判できない。結局はパソコン・メーカーを通じて、一般消費者が不利益を被っている。

――インテルは公取委による排除勧告を応諾したが、なぜ今になって提訴するのか。

 インテルのスタンスは、詭弁と言わざるを得ない。形の上では排除勧告を応諾したものの、状況は全く改善していないからだ。インテルは、市場を独占して得た巨額の資金を使ってメーカーに圧力をかけ、さらに独占的地位を固めるという「独占のサイクル」を築いている。

 例えば東芝のノート・パソコンでは、当社製プロセサのシェアが5割を超えたこともあったが、現在はゼロだ。同様に日立とソニーについても、搭載プロセサは100%インテル製のままだ。

――損害賠償請求に、どれほどの効果があるのか。

 60億円という損害賠償の金額自体は、インテルには取るに足らないかもしれない。しかし、先ほども述べたように、今回の訴訟はグローバルなものだ。もし日本で先行して判例を勝ち取ることができれば、米国での裁判にも大きく影響するはずだ。それが「独占のサイクル」を崩すことにつながる。ヨーロッパでも、独禁当局がインテルを調査していると聞く。今後、他の地域でも訴訟を起こすことはあり得る。

聞き手、玉置 亮太=日経コンピュータ