「あなたの会社のITコストは適正額ですか」――。この問いに自信を持って「イエス」と答えられるIT部門はそう多くないはずだ。ここ数年、ユーザー企業各社はITコストの削減に向け必死の努力を続けている。どうすればITコストのムダをそぎ落とし、戦略投資に回せるのか。ITコスト最適化に向けた方策を探った。

(戸川 尚樹、西村 崇)

予算編 予算策定から勝負は始まる
開発編 削減の基本作法を知る
保守・運用編 保守・運用費こそ変動費
ベンチマーク編 品質を考慮し妥当性を検証


【無料】サンプル版を差し上げます本記事は日経コンピュータ2004年9月20日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 ITコストの最適化はユーザー企業にとって永遠のテーマ。景気は上向いているものの、経営のITコストに向ける目は相変わらず厳しい。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によると、ユーザー企業のほとんどが2004年度のIT予算を現状維持、または前年度より削減している。システム部長は厳しいコスト削減のプレッシャにさらされている。

 「IT予算は同業他社並みに抑えた」と自負するシステム部長もいるだろう。だが、安心するのは早い。自社のITコストの妥当性を客観的に評価する指標が普及していない現状では、IT投資に見合った効果が本当に得られているか、経営はなかなか納得してくれない。「IT Doesn’t Matter(もはやITに戦略的価値はない)」とばかりに、際限なしのコスト削減をIT部門に求めてくる可能性さえある。

 こうした経営のプレッシャをはねのけるには、ITコストに潜むムダを徹底的にそぎ落とし、最適化するしかない。「当社のIT予算には1円のムダもありません」と自信を持って説明できるようになるのが理想である。

 だが、現実は厳しい。「ITコストのムダをそぎ落とす」と言うのは簡単だ。しかし、「IT投資の対象は多岐にわたる上に、IT部門が管理していない細かな費用もたくさんある。現状では、その至るところにムダが潜んでいる」。大成建設の木内里美情報企画部長はこう指摘する。

ITコストの“見える化”に挑戦

図●ITコスト最適化への挑戦
 50社ほどに話を聞いたところ、ほとんどのユーザー企業がITコストの最適化に向けた活動を始めていた。予算の作成から執行に至る各過程に潜むムダを削るため、気の遠くなるような地道な努力を積み重ねていた。

 各社の取り組みは二つに集約できる。一つは会社/グループ全体でどのぐらいの金額をIT関連に支出しているか、正確に把握すること。各社とも「これまで管理対象から漏れていた部門システムの構築・運用費や通信費などの支出をIT部門で把握すれば、重複やムダを発見しやすくなる」(ライオンの橋本昭三統合システム部長)と考え、そのための体制/ルール作りを急ぐ。

 ITコスト最適化に向けたもう一つの取り組みは、把握した全社ITコストの内訳をきめ細かく管理し、それぞれが妥当な支出かどうか厳しく監査すること。支出の内容をゼロ・ベースで見直し、ムダを取る。

 一連の取り組みは「情報システムの家計簿」を作る作業である。家計と同じようにIT関連の支出を一定のルールで漏れなく分類・記録し、無駄な出費を抑える。トヨタ生産方式の考え方を、ITコストの最適化に応用する動きと言うことも可能だろう。トヨタ生産方式では在庫量や作業内容を「見える化」することでムダを顕在化させ、対策の立案を促す。これと同じように「IT関連の支出額と支出内容を細かく把握した上で、金額の多寡にかかわらず、それが妥当な支出かチェックすれば、ITコストのムダはおのずから減らせる」(清水建設の清水 充情報システム部長)と各社は期待する。

 もちろん、この作業には大変な手間と時間がかかる。だからといって、あきらめては事態はいっこうに改善しない。利用頻度の低いシステムの保守・運用費や使いもしない機能を備えたシステムの開発費を減らさない限り、ITコストは適正化できない。

 システム部長たちが最も恐れているのは、適正化の努力を怠った結果、「IT関連の支出は一律10%カット」といった指示が経営から下りてくること。これを実施すると、戦略システムへの投資まで滞り、企業競争力に悪影響を及ぼしかねない。「事業を伸ばしたり、サービスを素早く立ち上げるためのシステム開発費をケチるのは、企業経営の観点からはもってのほか」とセコムの中村 晃IT戦略室長は断言する。


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