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企業向けのデスクトップLinux製品が相次ぎ登場している。従来のLinuxはクライアントOSとしては使い勝手が悪かったが、大幅に改善した。具体的には、オフィス・ソフトなど主要なソフトが出そろい、操作性が向上、利用できる周辺機器も増えた。ただ、だれでも導入できるわけではないし、ベンダーが主張するコスト、セキュリティ、管理面のメリットは、必ずしもすべてのユーザーに当てはまるわけではない。デスクトップLinuxを導入できるのは一部に限られそうだ。

(大森 敏行)


【無料】サンプル版を差し上げます本記事は日経コンピュータ2004年7月26日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「クローズアップ」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 「去年までは見向きもされなかったが、今年に入って状況が変わってきた」。ターボリナックス 営業本部クライアントグループの中尾貴光部長は、企業向けデスクトップLinuxの市場を、こう説明する。

 相次ぐセキュリティ・ホールの発覚と、それに伴う頻繁なパッチ当て作業、ファイル共有ソフトなどをユーザーが勝手にインストールしたことによる被害を食い止めるための施策…。ユーザー企業の情報システム部門は、クライアント管理の作業に追われている。そこで「Windowsに比べて手間がかからないクライアントOS」としてデスクトップLinuxに期待を寄せ始めたというのだ。中尾部長は、「数社が具体的に検討を始めた」と打ち明ける。

 商機を見いだしたベンダーは、相次ぎ企業クライアントに特化した製品を投入している。

図1●デスクトップLinuxを導入すべき理由
 例えば米レッドハットは5月4日に「Red Hat Desktop」を発表、6月1日に米国で出荷を始めた。レッドハット パートナーマーケティングの土屋淑恵マネージャーは、「時期は未定だが、必ず日本でも発売する」と言い切る。サン・マイクロシステムズは5月18日、昨年12月に米国で発売した「Sun Java Desktop System」の日本語版を市場に投入した。ノベルは今秋、次期企業向け製品である「SUNDANCE(開発コード名)」の日本語版の出荷を予定している。

 国産ベンダーであるターボリナックスは、あらためて企業向け製品を用意することはしない。しかし既存の「Turbolinux 10 Desktop」を対象に7月1日から、企業向けサポート・サービス「ターボサポートforクライアントCorporate」の提供を始めた。

導入に値する二つの理由

 企業がデスクトップLinuxの導入を検討し始めた理由としてLinuxベンダーが挙げる項目を整理すると、大きく二つに分けられる(図1[拡大表示])。

図2●Linuxで利用可能なアプリケーションの例。オフィス・ソフト、Webブラウザ、PIM(個人情報管理)/メール・ソフトと最低限のソフトはそろっている
 一つは、デスクトップOSとしての使い勝手が向上したこと。従来のLinuxはクライアントOSとしては使い勝手が悪く、導入の検討すらされなかった。だがここにきてクライアントOSとしても使える環境が整ってきた。象徴的なのが、Linuxで利用できるオフィス・ソフト「StarSuite」とそのオープンソース版「OpenOffice.org」の存在だ(図2[拡大表示])。Word、Excel、PowerPointと互換性のあるソフトから成る。ベンダーは「これでWindowsに追いついた」と口をそろえる。

 ただし、「Windows並み」だけでは、あえて導入する意味はない。そこでベンダーは、Windowsより有利な点を三つ挙げる。コストとセキュリティ、管理面である。セキュリティでは、ほとんどのウイルスやワームのターゲットはWindowsで、Linuxが狙われることは少ない点を強調する。管理面では、ネットワーク・ゲームやファイル共有ソフトといった業務の支障になるソフトがほとんどないため、ユーザーが勝手なことをしにくいとする。

図3●産業技術総合研究所でデスクトップLinuxが導入可能な事務職員の割合。東京とつくばの事務職員1145人中153人(13.3%)にデスクトップLinuxが導入可能だと判定した。「電子政府におけるオープンソフトウェア活用に向けての実証実験フィジビリティ調査」による
 ただ、すべてのWindowsパソコンをLinuxに移行できると考えるのは早計だ(図3[拡大表示])。産業技術総合研究所(産総研)は、昨年9月から今年3月にかけて、デスクトップLinuxの導入可能性を探る調査を実施した。東京都と茨城県つくば市にある産総研の事業所に勤務する事務職員(研究者以外の職員)を対象に、職場のシステムや作業内容などを勘案し、その職員が使っているパソコンにデスクトップLinuxを導入できるかどうかを判定した。

 この結果、デスクトップLinuxの導入が可能だと考えられる事務職員の割合は13.3%だった。この数字をどう考えるべきか。以下、デスクトップLinuxの実力をベンダーの主張に沿って検証していこう。

解決しきれない互換性問題

 従来と比べて使い勝手が向上した理由の一つとして挙げられるのが、アプリケーション・ソフトの充実である。

 オフィス・ソフトでは、前述したStarSuiteやOpenOffice.org以外でも、ジャストシステムが同社のワープロ・ソフト「一太郎」のLinux版の開発を進めている。今年末には販売する計画だ。


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