日本デルモンテは今年4月、「基幹系システムをERPパッケージのR/3で統一する」という念願を果たした。最後まで旧システムに残っていた原価計算機能をついにR/3上に実装した。だが、そのためにはハード/ソフトを総入れ替えするR/3のバージョンアップ大作戦を実施する必要があった。デルモンテは厳しい予算のなか、決して無理せず、余裕を持って進めることで、一連の移行作業をほぼノートラブルで終えた。(文中敬称略)

(栗原 雅)


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写真●日本デルモンテ 管理本部総務部副部長の三津兼一郎(右)と同課長の栗原規夫。第1回バージョンアップの教訓を生かし、第2回は余裕を持って作業を進めた
 「思ったより大ごとになったが、これでついに基幹系の全主要機能がR/3の上に載った」。日本デルモンテの三津兼一郎(写真[拡大表示])は、感動を率直に語る。同社の管理本部総務部副部長としてIT戦略の推進役を務める三津にとって、SAPジャパンのERPパッケージ(統合業務パッケージ)「R/3」による基幹系の統一は8年前からの宿題。それが今年4月にようやく果たせたのだから、感慨もひとしおだ。

 三津の言葉にもあるように、R/3による基幹系の統一は、一筋縄ではいかなかった。最後まで残った原価計算機能の実装は、R/3本体だけでなく、ハードやOS、データベース・ソフトまでを総入れ替えする大プロジェクトに発展した。だが、三津をはじめとするデルモンテのスタッフは、日本IBMやアビーム コンサルティングなどの支援を受け、1年超のバージョンアップ大作戦を乗り切った。余裕を持って段階的に作業を進めたのが大きかった。

取り残された原価計算機能

 三津とR/3の付き合いは古い。デルモンテがR/3による基幹系システムの刷新プロジェクトを始めた1996年1月までさかのぼる。

 「基幹系をR/3で統一する」との大目標を掲げてスタートしたプロジェクトは、当初から難航した。全業務にR/3を適用するには、かなりのアドオン(追加開発)が必要になると分かり、いったんは中断に追い込まれた。

 三津らは、R/3での実現に時間がかかる機能は、アドオンを作るのではなく、AS/400上の既存システムを継続利用するよう方針を転換。98年8月には生産、購買、販売、会計、人事などのシステムがR/3上で動き出した。

 その後、三津らはR/3の機能強化に歩調を合わせ、少しずつAS/400で動く既存システムをR/3に吸収していった。2000年5月にR/3を「3.1F」から「4.6B」にバージョンアップした際には、積み残しになっていた機能の多くをR/3で実現した。

 しかし、原価計算機能はAS/400に最後まで残った。これはトマト・ケチャップやジュースといった製品ごとに設定した標準原価(原料費や容器費、労務費など)と、実際の原価との差を把握するためのもの。「R/3にも原価計算機能はあるが、標準原価と実際との差額を品目別に細かく把握する点などで、当社が求めるレベルに達しなかった」と三津は理由を説明する。

 原価計算機能の未実装は、システム運用の面で重荷になっていた。新旧システムを並行稼働させ続ける必要があったからだ。

修正ファイルの未適用で断念

図1●日本デルモンテのバージョンアップ・プロジェクトの経緯
 2002年初め、三津のところに吉報が届いた。SAPジャパンが標準原価との差額を算出する機能「品目元帳」をR/3に追加したとの情報だ。

 「これでようやく原価計算をR/3で実現できる」。三津は期待を胸に、SAPジャパンに詳細を問い合わせた。しかし担当者の説明を聞くうちに、次第に表情が曇っていった(図1[拡大表示])。

 「御社が望まれる機能は、確かに品目元帳で実現できます」。SAPジャパンの担当者は、問い合わせにこう回答した。ただし、それには一つ条件が付いていた。「4.6Bで品目元帳機能を使うには、最新版のSPまできちんと適用していただかなければなりません」。

 三津は愕然とした。SAPジャパンは、R/3の不具合や法改正に対処するための修正ファイルSPを毎月1~2本ペースで提供している。だが、R/3が安定稼働フェーズに入った企業は一般に、新機能の追加などで必要に迫られない限りSPを適用しない。

 デルモンテも例外ではなかった。


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