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英クリアスウィフトは電子メールの内容をチェックするメール・フィルタリングのサーバー・ソフトウエア開発の草分け的存在。コンピュータ・ウイルスへの対策に比べて,メール・フィルタリングに対する企業や官公庁の意識はまだまだ低い。英クリアスウィフトのドン・テイラーCEOに企業や官公庁の導入動向,日本における戦略について聞いた。(聞き手は市嶋 洋平=日経コミュニケーション)
--コンピューター・ウイルスへの対策に比べると,電子メールの内容をチェックすることに対する企業や官公庁の意識は低いように思えるが。
普通の企業では社員が長々と私用電話をしたり,企業秘密を漏らしたら問題とされる。また外部から勧誘電話が次々とかかってきたら仕事にならなくなる。これを電子メールに置き換えればば,内容をフィルタリングすることが必要不可欠であることが分かるだろう。しかし,隣の席であっても,同僚が電子メールで何をやり取りしているのかを知ることはできない。
こういった状況を理解し,世界中でおよそ1万4000の会社や官公庁がクリアスウィフトの製品を使っている。
--企業の機密を持ち出そうとする社員や職員は電子メールのフィルタリングを避けるよう,フロッピーで持ち出すなどで不正行為を働くのでは。
まず,電子メールの内容をフィルタリングをしているという告知が,不正行為をしようとする社員や職員へのけん制になる。
そして,悪意がないユーザーが引き起こす問題を水際で食い止められる。99.9%のユーザーは問題を起こしているという意識を持っていないのだ。タイプライターの時代は外部に文書を出すのに何度も何度もチェックをしたはずだ。これがファクシミリ,電子メールと発達するにしたがって安易になってきた。仮に社員や職員に悪意がないとしても,送った電子メールが法律に違反したり公序良俗に反し,大問題に発展するケースがある。こういった大部分の問題を電子メールの内容を実際にフィルタリングすることで防げる。
--日本では電子メールのフィルタリングに一部の大企業が取り組み始めたところといえる。国内における販売戦略は。
日本では4年前から製品を販売しているが,昨年日本法人を設立しサポート体制を強化した。今後の日本における戦略は大きく三つある。
一つめが電子メール・フィルタリングのASP(application service provider)サービスである。日本のインターネット接続事業者と交渉中である。ユーザーが自社にサーバーを設置しなくても,電子メールをフィルタリングできるようになる。すでに米国や英国ではこの形でも提供している。
二つめが携帯電話向けのサービスだ。携帯電話の電子メールにも強力なフィルタリング機能を導入したい。具体的には,電子メールの文章だけでなく,携帯電話のデジタルカメラで撮った画像のイメージもフィルタリングのチェック対象とする。公序良俗に反したり,重要機密を記した画像を送受信している可能性があるからだ。大容量のデータを送受信する第3世代携帯の導入も始まっている日本では,ビジネスと一般ユーザーの両方にますます重要になってくる。
三つめは企業だけでなく,官公庁への導入促進だ。英国では政府が約11万3000の職員の電子メールをフィルタリングしている。内容が法律や公序良俗に反していないか厳しくチェックしている。日本でもセキュリティ意識の高まりから,官公庁が導入するだろう。
--電子メールのフィルタリングに関する特許は申請しているのか。
特許は重要だ。今のところ8件ほど申請している。そのうち4件が成立した。1年間に特許を二つぐらい出していきたいと考えている。
出願している特許のうち,暗号化した電子メールのフィルタリング技術に注目している。暗号化されたメールをデコードしてフィルタリング,そして再度エンコードするもの。これを一つのブラックボックスとして提供する。「DeepSecure」と呼んでいるもので,オーストラリアの国防省が導入を決めている。
特許に関しては不満がある。世界各国で特許を取得しようとすると,多大な費用と時間がかかる点だ。一つの特許で100万ドルかかる場合もある。我々のような小さな会社にとっては,拷問のように厳しい。国連のような組織で,1カ所に出願し成立すればすべての国で有効になるようなってくれないものか。