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 米シスコ・システムズ,米ジュニパー・ネットワークスでルーター開発に携わったルーター開発の“カリスマ”,トニー・リー氏。リー氏が1999年に設立した米プロケット・ネットワークスが約4年の開発期間を経て,2003年3月に第1弾製品の出荷を開始した。通信事業者向けコア・ルーターの開発を手がけてきたリー氏にルーターの信頼性について聞いた。(聞き手は山根 小雪=日経コミュニケーション)

--プロケット・ネットワークスを設立したのはなぜか。

 米シスコ・システムズでも米ジュニパー・ネットワークスでもやれなかったことをやるためだ。
 シスコでは,ルーター用ソフトを開発した。シスコの場合,何らかのバグがあればルーター用OS自体のアップグレードが必要だ。ジュニパーではルーター用ソフトのモジュール化に取り組んだ。ルーター機能をいくつかのモジュールに分けることで,バグの影響範囲を小さくした。しかし,まだ一カ所のバグを直すことで他の機能に影響が出るケースを回避できない。
 プロケットを設立したのは,3度目の正直だ。シスコでもジュニパーでもやれなかったソフトウエアのモジュール化に取り組んでいる。機能を細分化することで一つのバグの影響範囲を小さくし,耐障害性を格段に高くすることに成功した。

--通信事業者向けをうたっているルーターやスイッチも,実際には通信事業者が求める品質には達していないことも多いと聞くが。

 企業向け製品をアップグレードしていくだけでは,通信事業者が求める信頼性を提供できないからだ。当社の製品は,まさに通信事業者向け製品。内部はごく一部を除いて完全に2重化。1台のルーターの信頼性を限りなく高くすることで,複数台で冗長構成を取る必要をなくす。こうすることで,通信事業者にとっては機器コストが激減する。この効果は,現時点では通信事業者の懐を暖かくするだけかもしれないが,いずれはエンドユーザーにも還元されるはずだ。
 また2004年中には,ルーターをリブートしなくてもソフトウエアをアップグレードできるようにする。

--そもそもなぜルーターは信頼性が低いと言われるのか。

 ルーター用ソフトの問題だ。ルーターが高機能になってソフトが複雑になればなるほど信頼性は低くなる。
 パケットにラベルを付けて転送するMPLS(multiprotocol label switching)でルーターを使うネットワークの信頼性を高めるのも,同様の理由から最適解だとは思わない。MPLSはソフトウエアで処理しなければならないことが多いからだ。それよりも,ルーターの信頼性を限りなく高めて,IP over WDM(波長分割多重)で信頼性の高いネットワークを構築するのが理想だ。
 とはいえ,既存のプロトコルだけでは障害時に高速でう回経路に切り替えることが出来ない。MPLSの高速う回技術「ファスト・リルート」などを使うことは現時点では有効な手だてかもしれない。

--最近,一番注力していることは何か。

 次世代のハードウエアを開発することだ。独自開発しているVLSI(very large scale integration)チップなら,ASIC(特定用途向けIC)では出せなかったパフォーマンスを実現できるはず。事実,今出荷している製品も,VLSI一つで40Gビット/秒のトラフィックをさばける。
 通信事業者の基幹網に流れ込むトラフィックは毎年倍増している。今のルーターの10倍の性能のものを作っても数年しか持たない。だからこそ次の製品では,数千倍の能力を持ったものを提供したい。

--未来永劫,IPの世界が続くと思うか。

 続くように貢献したいと思っている。いつか新しい発明が生まれるかもしれないが,まだ見えていない。