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 広域イーサネットの実現技術に採用されている「拡張タグVLAN」や「Ether over Ether」(EoE)と別に,標準化が間近な最新技術がある。IP-VPNの実現技術「MPLS」(multiprotocol label switching)をイーサネットで提供する「VPLS」(virtual private LAN service)だ。IETF(Internet Engineering Task Force)でVPLSを検討する「L2VPNワーキング・グループ」のチェアマンを務める仏アルカテルのプリンシパル・エンジニア,バッチ・コンペラ氏に,VPLSの現状と将来性を聞いた。(聞き手は山根 小雪=日経コミュニケーション

--VPLSとはどんな技術なのか。

 VPLSは,MPLS網上でイーサネットのMAC(media access control)フレームを転送できるようにした技術だ。広域イーサネット・サービスの実現技術として期待されている。
 2001年7月にインターネット技術の標準化団体IETFに初めてドラフト(草案)を提案した。当時,私は米タイメトラに所属していた。タイメトラは2003年7月にアルカテルによって買収され,同時に私は開発した製品ともどもアルカテルに移ってきた経緯がある。
 VPLSの標準化作業は継続中だが,技術的な内容の検討は完了している。現在は文言などの最終確認をしている段階で,7~8月にはRFC(Request for Comments)になりそうだ。

--国内の通信事業者は広域イーサネットに拡張タグVLANやEoEといった技術を採用している。VPLSはこれら既存の方式と比べてどうか。

 すべての面においてVPLSの方が優れている。例えば,イーサネットではトラフィックの制御ができないが,VPLSでは可能だ。MPLSの高速う回機能「ファスト・リルート」などが使えるため,耐障害性もVPLSの方が高い。既にMPLS網を構築している通信事業者も多く,提供するサービスが変わってもインフラが陳腐化しないで済むメリットもある。
 EOEは独自に策定された技術で標準化されていない。通信事業者にとっては,導入しにくい技術ではないだろうか。VPLSは標準化が進み,当社を含め多くのメーカーが実装を始めている。製品の性能や価格面での競争が起こる可能性が高い。
 他のメーカーの動きを見ても,VPLSは大きな流れになりつつある。例えば,MPLS技術に関する国際会議「MPLS2002」のパネル・セッションである大手ルーター・メーカーが「1年後にVPLSは消える」と予測した。だが,そのメーカーは1年後にVPLSを実装すると発表している。
 当初VPLSには,MACアドレスを学習できる数に限界があることや,ネットワーク管理機能の乏しさなどが指摘されてきたが,現在では解消できている。

--標準化の最初からかかわってきたメリットは何か。

 ベースとなる仕様を我々が考えてきた分,プロトコル・スタックを作るのは他のメーカーよりも早い。標準化の議論を進めているときにはプロトコル・スタックができ上がっている。他社が取り組んでいるときには,もう次の開発を進められる。
 例えば保守運用(OAM)機能。他社がVPLSのプロトコル・スタックを開発している間に,当社はVPLSで使うためのping機能の開発を進められた。今でもOAM機能などは他社製品よりもアドバンテージがあると自負している。

--VPLSを実装した製品の納入実績はあるのか。

 残念なことに日本国内での導入実績はないと聞いている。だが,海外では多くの通信事業者が既にVPLSを利用している。
 タイメトラ時代にはユーザーは1社しかいなかった。アルカテルに買収されてから,通信事業者の反応は全く変わった。買収後わずか1年半で米SBCコミュニケーションズや北欧4カ国に展開するテリアソネラなど,60以上のユーザーを公表できている。2004年初頭に製品の技術面,サポート面ともに整ったことも大きい。