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 郵政事業の民営化に関する報道ですっかり認知度の上がった「ユニバーサル・サービス」という用語。電気通信の世界では一足早く,1990年代後半には利用されだしている。2002年6月には電気通信事業法が改正され,「ユニバーサル・サービス基金」も生まれた。NTT東西が過疎地域などでサービスを提供することによって生じた赤字を,各電気通信事業者が共同で補てんするための制度だ。

 ただ,このユニバーサル・サービス基金が発動するための敷居は高い。電話事業全体で赤字とならないと,補助金は支給されないからだ。つまり,NTT東西の電話事業が赤字に陥ることが前提であり,実質的に発動される可能性はきわめて低いと考えられていた。

 それが,今回,発動が前提の制度に改められることが確実となった(参考記事)。ここで真っ先に気になるのは,誰がいくら負担するかである。現行のユニーバーサル・サービス基金では,各通信事業者の売上高をベースに計算することになっている。これが,新制度では利用している電話番号の数をベースに計算されることになる。このコストは,最終的にはエンド・ユーザーに転嫁されるため,電話番号を多く利用しているユーザーほど負担が大きいことになる。

 さて,そこで記者が個人的に利用している電話番号を数えてみた。自宅の固定電話,携帯電話,ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)が提供する050のIP電話,そしてデータ通信用のPHSカードと全部で4番号ある。このうち,固定と携帯の電話番号についてはともかく,残る2つに関しては,ユーザーや提供事業者から異論が噴出しそうだ。

 050番号に関しては,現在,支払っている基本料は0円である(正確にはISP接続料に含まれていることになるが)。ISPが加入キャンペーンを実施していたのと,ADSL事業者がレンタルするモデムが標準でIP電話機能を持っていたため,加入してみただけだ。何かきっかけがあれば利用する可能性もあるだろうが,現状での利用実績はほとんど無い。無料だから解約しないだけである。ユニバーサル基金のユーザー負担が正式に決まれば,その日の内に解約することになろう。ISPにとっては,現状での利用実績は無くても,せっかく囲い込んだユーザーに逃げられるのは面白くないだろうが。

 一方のPHSは,バリバリ利用しており,解約はあり得ない。ただ,そのトラフィックは100%データである。070番号を持ってはいるが,それが何番なのかは,料金明細を探し出さないと分からないほど,存在感がない。確かに,理論的には,ソフトフォンのような仕組みを用意すれば,通話は可能だ。スピーカーホン用コネクタを備え,通話用ソフトが提供されている端末もある。とはいえ,実際に通話目的でPHSカードを所有している人がどれだけいるのだろうか。

 そういえば,かつて「ワンナンバーサービス」が盛んにPRされた時期があったことを思い出した。オフィスや自宅のどこにいても同じ電話番号でつながるというサービスだ(ISPのダイヤルアップ・アクセスポイントが全国共通番号になるサービスとは別物)。携帯電話の爆発的な普及で日の目を見なくなったが,ユニバーサル基金の登場で,コスト負担を減らせるとして再度脚光を浴びるのだろうか。

よく考えたら,利用する電話番号が増えるだけだった。

(前田 潤=日経コミュニケーション 副編集長)