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IP-VPNサービスで約110拠点を接続
大規模空港はアクセス回線を3重化
都内の拠点はイーサネット専用線で広帯域化


全日本空輸は,IP-VPN(仮想閉域網)とイーサネット専用線で社内網を再構築した。航空会社のネットワークは,飛行機をスムーズに運航するための信頼性確保が至上命題。広帯域化と同時に耐障害性の高さにこだわった。
(宗像 誠之)

 全日本空輸(全日空,ANA)は2001年9月,専用線で構成した社内ネットワークの更改作業に着手した。IP-VPNとイーサネット専用線を併用して全面刷新する()。5月中に再構築が完了する。

 14年ぶりとなるこの新社内網構築の狙いは二つある。(1)中枢拠点を接続する回線の広帯域化,(2)全国の拠点をつなぐネットワークの問題点解消――だ。加えて,重要拠点の信頼性の維持には最も気を使った。

 新ネットワークは「空港業務が絶対に止まらないように注意を払った」(全日本空輸の川浪宏之IT推進室 IT基盤担当,写真)。チェックインや搭乗ゲートの遅れはフライトの遅れに直結する。「乗客への迷惑になるだけでなく,運航予定がすべて狂う」(同氏)。

 二つの狙いと信頼性の高さをどう実現したかを順番に見ていこう。

イーサ専用線とIP-VPNを活用

 全日空の新ネットワークは大きく二つに分けられる。(1)イーサネット専用線で構成する東京都内の拠点を結ぶネットワーク(図の左),(2)IP-VPNを利用して全国の拠点を接続するネットワーク(図の右)――だ。

 両ネットワークはデータ・センターをハブにして接続する。データ・センター内には「約50種のシステムと約200台のサーバーがある」(川浪氏)。発券,予約,チェックイン,運航管理,乗務員スケジュールなど,業務上で欠かせないサービスが,データ・センターに集中している。

従来ネットには問題点が三つ

 従来の社内ネットワークは,データ・センターを中心に専用線でツリー状につないだ構成だった。これには問題が三つあった。

 一つめは,ネットワークを拡張しにくかったこと。ツリー状に展開するネットワークでは,拠点を増やすときに,上位拠点すべてでルーターの設定を変える必要がある。このため拠点の拡張が大きな手間となっていた。

 二つめがスループットの低さ。末端の拠点からデータ・センターへの接続は,複数の拠点を経由する。例えば,宮古島からは沖縄,福岡拠点を経由してデータ・センターにアクセスする。網内の遅延によって,時にはアプリケーションが使えなくなることがあったという。

 三つめはコストが高かったこと。空港は都市部から離れたところにある場合が多いため,料金が距離に依存する専用線は高くついてしまう。コスト管理もやりにくい。

ネットワークを設計した全日空の川浪宏之IT推進室IT基盤担当

初期段階でIP-VPN採用を決定

 三つの問題点を解決するために選んだのがMPLSベースのIP-VPNサービスである。同サービスで全国の拠点を接続しておけば,拠点を増やす場合でも,既存の拠点の設定をほとんど変えずに済む。月額の通信コストも従来の3分の2に下がった。

 また,IP-VPNサービスには遅延に関するSLAがあるため,「遅延で社内網が使えなくなることはない」(川浪氏)と判断した。実際に使い始めてからも遅延で困ったことはないという。

 IP-VPNサービスの採用は検討の初期段階で決定していた。広域イーサネット・サービスを使うことも可能だが,検討を始めた2001年3月当時,広域イーサネット・サービスを全国展開しているのはクロスウェイブ コミュニケーションズ1社しかなかった。
「1社しか提供していない状況では広域イーサネットは選べなかった」(川浪氏)という。

2重化回線は別々のルーターに接続

 IP-VPNサービスは,数社の中から日本テレコムが提供する「SOLTERIA」を選んだ。「一番コストが安く,全日空から出した条件を満たしていた」(川浪氏)からだ。

 条件は数点あったが,最も強く要求していたのは,「一部拠点で2重化しているアクセス回線を,それぞれ別のPEルーターに接続してほしい」というものだった。同一のルーターに2本の回線を接続していると,そのルーターがダウンした際に2回線とも使えなくなってしまい,冗長化の意味がなくなるからだ。

図 全日空が再構築した社内ネットワーク
 専用線で構成した従来の社内網から,イーサネット専用線とIP-VPNを併用する社内網へと切り替えた。


※本記事は日経コミュニケーション2002年5月6日号からの抜粋です。 そのため本文は冒頭の部分のみ,図や表は一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。全文は同号をご覧下さい。そのためにはバックナンバーとして同号だけご購入いただくか,日経コミュニケーションの定期購読をご利用ください。