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Webベースの営業店舗支援システムを稼働
フレッツ広域版とIP-VPNを併用しトラフィック分散
フレッツ・ADSLで回線費を抑制

JTBは6月から,全国約300支店にADSLの導入を開始。広域対応のフレッツ・オフィスへ収容する広帯域ネットの構築を始めた。目的は,支店で使う情報系システムのレスポンス向上。既存のIP-VPNもホスト用に残してトラフィックを分散した。
(高槻 芳)

 旅行業界は今,かつてないほどの厳しい局面を迎えている。2001年9月の米国同時多発テロ,2002年末からの新型肺炎「SARS」(重症急性呼吸器症候群)やイラク戦争の影響で,海外旅行者が激減。大手旅行会社は軒並み業績を落とした。

 業界トップのJTBも例外ではない。2003年3月期における海外旅行部門の売上高は3962億4800万円と,2001年3月期実績から約23%も下回った。

 こうした状況下でも,JTBは積極的にネットワークへの投資を続けている。狙いは,営業店舗の販売業務を徹底的に支援して,売り上げの回復につなげること。「業績が厳しい今こそITを活用して,営業の最前線にいる社員の“旅行コンサルティング力”を高める」(東日本営業本部の鈴木伸二・店舗・情報戦略担当マネージャー)という目的がある。

 例えば2003年4月から,Webベースの社員用旅行情報ポータル・サイト「I-WEB」をスタート。営業店の窓口で社員がパソコンを使って,顧客からの問い合わせに応じて現地の最新情報を検索できる。画像をふんだんに使ったWebページを見ながら,顧客と一緒に旅行プランを検討するような用途を想定している。

 Webベースの新システムの導入と同時に,高速ネットも導入した。2003年6月からNTT東西地域会社の「フレッツ・ADSL」とIP-VPN(仮想閉域網)サービス「フレッツ・オフィス ワイド」を導入。12月までに全国300店舗への展開を完了させる計画だ。

 高速かつ安価なネットワークを構築する上で,フレッツ・オフィスの採用はオーソドックスな手法である。だがJTBは,それまで基幹網に使っていたNTTコミュニケーションズ(NTTコム)のIP-VPNをそのまま残した。その上で,レスポンスを確保するため,フレッツ・オフィス ワイドは情報系システムで使うという手法をとった。

IP-VPN統合からわずか1年で見直し

 JTBは2002年4月,通信コストの削減を目的にすべてのシステムのトラフィックをNTTコムのIP-VPNサービスに統合。それまで年間約7億円かかっていたネットワーク運用コストを約4億5000万円に圧縮した。ところがIP-VPNへ移行したところ,社員が電子メールやWebサイトを活発に利用するようになった。その結果,情報系のトラフィックが急増し,営業店舗でのネットワークのレスポンスが目に見えて落ちてきていた。

 そこでJTBは2002年後半に,ネットワークの見直しに着手。11月に東西NTTがフレッツ・オフィスの広域化を表明したのを機に,情報系システムのトラフィック専用網としてフレッツ・オフィス ワイドを追加導入した。新たに年間約1500万円の通信コストがかかるが,営業店舗での業務システムの使い勝手を最優先した。

店舗でホストとWebを使い分け

 JTB営業店舗の業務を実際に支えているシステムは3種類。(1)予約販売システム「TRIPS-V」,(2)会計処理システム「POPS」,(3)電子メールやグループウエアなどを統合した情報系システム「J-WEB」――である。前述のI-WEBは,J-WEB上の新アプリケーションという位置付けだ。うちTRIPS-VとPOPSがIP-VPNを使う基幹系ネットワーク,J-WEBがフレッツ・オフィス ワイドを使う情報系ネットワークを利用する()。

 TRIPS-Vは,JTBのビジネスの根幹をなす独自の予約・発券処理システム。東京・多摩の同社ネットワーク・センターに設置してあるホスト・コンピュータ上で動作する。例えば客から問い合わせがあると,支店のパソコンから多摩のホストに接続して予約状況を照会する。

JTB経営企画部
IT企画チーム
高橋 一郎氏

 旅客機や列車などの空席情報は,ホスト・コンピュータが各社のホストに問い合わせて入手している。予約する場合もJTBのホストが再度,航空会社や鉄道会社などのホストに予約データを送る。

 航空券などの発券処理や代金精算は,POPSが処理を引き継いで実行。POPSはTRIPSと同様にホスト上で稼働するJTB独自のシステムである。

 一方,J-WEBでは「LOOK JTB」など自社の企画商品や,旅行先の観光スポットの案内,渡航時の注意事項などをデータベースに蓄積。店舗のパソコンからはポータル・サイトの「I-WEB」を介して,必要な情報にアクセスする。また,過去に来店した顧客情報をデータベースに蓄積して,どの支店からでも引き出せるようにしている。

 J-WEBを通してPDFファイルでパンフレットの情報も見られる。今まで印刷会社に発注していたパンフレットを電子化し,サーバー上に蓄積。全国約300店舗の店頭で必要な部数・ページだけをオンデマンドで印刷できる。

 パンフレットの作成部数を減らし,コストを削減するのが狙いだ。「パンフレットの作成コストは年間約100億円を超える。全営業店舗で印刷するようになれば,約2割を節約できる」(JTB経営企画部IT企画チームの高橋一郎氏,写真)と言う。

図 営業店舗の業務を様々なネットワークで後方支援 
店頭における旅行プランの相談や提案,交通機関・宿泊先の予約や販売までの一連の業務は,ホスト・コンピュータ上のアプリケーションとWebアプリケーションの両方を使い分けて進める。さらに関東の一部店舗では,来店客に対する自社商品のプロモーションを図るため,動画コンテンツを配信している。

※本記事は日経コミュニケーション2003年7月28日号からの抜粋です。 そのため本文は冒頭の部分のみ,図や表は一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。