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【当初の計画】
現在の評価
IP電話を視野に広域イーサを選択

安定性・品質とも満足
内線電話網をIP化して集中管理

保守費や設定変更費を年4000万円削減
広帯域化したネットでアプリを活用

ビデオ会議や動画配信などの体制整う

新光証券はIP電話を大規模導入した先駆けの1社。全国100拠点,6800台のIP電話機を導入し終えてから1年が経過。十分な安定性とコスト削減効果に満足している。ただ,定期異動時の大量の設定変更作業には頭を悩ませたまま。

(島津 忠承)

 新光証券は新日本証券と和光証券が合併して2000年4月に誕生した,みずほフィナンシャル・グループの証券会社。同社は2002年5月から2003年5月にかけて内線電話網を一新。全国合計で約6800台の電話機をIP電話機に切り替えた。稼働当時では最大規模の導入事例である。

 新光証券がIP電話の導入を決断したのは,内線電話網の見直しが急務になっていたため。従来の内線網は合併前の両証券会社が利用していたPBX(構内交換機)をそのまま流用したもので,拠点間の通話には音声VPNサービスを利用していた。導入後15年以上経過したPBXを使い続けていた拠点もあった。これらの古いPBXを一気に撤廃することを狙ったのだ。

「拠点にPBXを残したくなかった」

 社内の内線網とデータ網を管轄するIT戦略部はPBXの再更改も検討したが,運用コスト面でIP電話が有利と判断した。拠点ごとにかかっていたPBXの保守費用などの削減を見込めるからだ。PBXは原則として各拠点に設置する必要があるが,IP電話サーバーはIP網でつながっている複数拠点の内線を1カ所から集中管理できる。

 しかもIP電話サーバーは,設定作業に従来のPBXほど専門知識が要らない。番号の登録・変更など,ある程度はユーザー自身でできる。PBX機能の集中管理と設定変更作業の内製化によって,年間で約4000万円のコスト削減効果が得られるとはじいた。

保留音を流すため広域イーサネットに

 IP電話の導入に先立つ2002年6月,全国約100拠点を結ぶ社内ネットワークを広域イーサネット・サービス主体で刷新。網内の通信品質に対して定評があったクロスウェイブ コミュニケーションズ(CWC)の「広域LANサービス」を選んだ。

 従来の社内データ網は,フレーム・リレーだった。IP電話やビデオ会議など,IPベースの多様なアプリケーションを積極的に利用するには広帯域の回線が必須。そこで,合併がらみの作業が一段落した2001年から,インフラの見直しを続けていた。

 当時,有力な通信サービスにはIP-VPNと広域イーサネットがあったが,新光証券は広域イーサネットを選択。「IPマルチキャストを問題なく利用できるから」(IT戦略部の女屋康明副部長兼ITインフラ課長)というのが理由だ。IP-VPNでIPマルチキャスト・パケットを通すには,カプセル化するなどの工夫が必要になるため,面倒と判断した。

 マルチキャストに注目したのは,米シスコ・システムズのIP電話サーバー「Cisco CallManager」(以下,CCM)を導入することを視野に入れていたため。シスコのIP電話システムは,電話の「保留音」を専用のサーバーからIPマルチキャストで配信する仕様になっている。

 シスコのCCMを選んだ理由の一つは導入実績だ。新光証券が検討した時点で,IP電話機を数千台規模で導入したことを明かしていたのは,CCMを利用する新生銀行だけだった。「データと連携するアプリケーションを開発する環境が比較的整っていた」(山田季之ITインフラ課マネジャー)点も高く評価した。

 IP電話サーバーはセンター拠点に7台設置。センターから全拠点のIP電話機を一括して制御する()。ただし,本店,東日本,西日本の地域ごとに,制御するサーバーは分けてある。安定性を確保するためだ。

自作操作マニュアルで移行の混乱防ぐ

 全拠点で稼働して約1年が経過した現在,IP内線網に対する満足度は高い。従来のPBXで利用していた各種の機能をほぼ問題なく移行できたからだ。

 高い満足度を得られているのは,IT戦略部が導入前に周到に対策を打っていたことも大きい。導入当初,対策を打つべき大きな問題が二つあった。

 一つは,導入するIP電話機のボタン数が従来の電話機より少ないこと。短縮ダイヤルなどの操作に割り当てられた専用のボタンがないため,数字ボタンなどを組み合わせて実現する必要がある。操作方法が従来の電話と変わってしまうわけだ。

 現場の社員の混乱を避けるため,IT戦略部はお手製のビデオ・マニュアルを作成した。外線電話を取る場合などの操作手順を,映像を見ながらWebブラウザで確認できる。

 マニュアルが功を奏し,現場から操作が分からないという声はほとんど寄せられなかった。「IT戦略部の部員が出張して操作指導にかかりきりになる無駄も減らせた」(女屋副部長)。

図 新光証券の社内ネットワーク 主にクロスウェイブ コミュニケーションズの「広域LANサービス」で拠点間を接続。本社とデータ・センター間はイーサネット専用線で結んだ。広域イーサネット網と接続するデータ・センターの足回りは当初の45Mビット/秒×4本から100Mビット/秒×4本に切り替えた。IP電話システムは米シスコ・システムズの「Cisco CallManager」で構築した。


※本記事は日経コミュニケーション2004年6月28日号からの抜粋です。 そのため本文は冒頭の部分のみ,図や表は一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。