村田製作所は9月に完成した新本社ビルに,データ通信とIP電話の音声を完全に分けた社内LANを構築。700台のIP電話機と200台の構内PHS端末を導入した。4月から始めた国内拠点間の内線VoIP化も完了。WANもデータと音声で分けた。

 京都府長岡京市に本社を置く電子部品製造大手の村田製作所。現在,セラミック・コンデンサで世界シェアのトップに立つ。同社の強みは,材料から最終製品までを一貫生産する体制を構築したこと。これは社内に蓄積した技術の“垂直統合”によって実現しているという。

 この技術の垂直統合を支えるのが,社員間の密接なコミュニケーションだ。村田製作所は2004年9月,JR長岡京駅前に新本社ビルを建設。同ビルへの移転に伴い,本社内に700台のIP電話機と200台の構内PHS端末を導入した。社員同士の情報伝達や意思疎通をより円滑にするためだ。

LAN/WANともデータと音声は分離

 新本社ビルのネットワークには,村田製作所のネットワーク設計思想が色濃く反映されている。パソコンやサーバーなどのデータ通信用LANと,IP電話や構内PHS用のLANを完全に分離したのだ。ネットワークの設計を担当した岡本義尚・事務管理部情報技術・サービス課長は「データと音声をLANに混在させず,別々にする方がネットワークをシンプルに保てる」と説明する。この“シンプル”の意味は,ネットワーク機器に余計な設定を施す必要がないということだ。

 IP電話はもともとデータ通信のために使われているLANに音声を流し,データと音声のインフラを統合できる点がメリットの一つ。しかし,LAN内でデータと音声を混在させる際は,音質確保のためVoIP(voice over IP)パケットに優先制御をかけたり,データと音声のトラフィックをVLANで区切るといった設定が必要となる。ビル内に多数存在するスイッチやルーターに,これらの設定を施すのははん雑な作業だ。それよりもケーブルやネットワーク機器の数が2倍になったとしても,「シンプルなLANを二つ作り,データと音声を分離した方がネットワークの設計・運用が簡単になる」(岡本課長)と判断した。障害発生時の問題の切り分けも容易だ。

村田製作所
事務管理部長
田和 芳彦

 データと音声の分離は,リスク分散の意味も大きい。「データと音声の混在だと,LANに障害が発生したら両方とも使えなくなる。それだけは避けたい」(岡本課長)。

 データと音声を分離する方針はWANに対しても同様だ。村田製作所は,2002年からデータ通信用にNTTコミュニケーションズのIP-VPNサービス「Arcstar IP-VPN」を導入している。しかし2004年4月に構築を始め,新本社ビルで完了した拠点間内線通話のVoIP化でも,Arcstar IP-VPNは全く利用しなかった。LANと同様,ネットワークをシンプルに保ち,リスクを分散するためだ。

 IP電話用のWANは,それまで利用していた音声VPNが日本テレコムのサービスだったため,同じ日本テレコムのIP電話/IPセントレックス・サービス「IP-One IPセントレックス」を採用()。データ通信とIP電話でWANの通信事業者が異なるので,いわゆる「キャリア2重化」によるリスク分散効果もある。

 今後は国内の中小規模の営業所を中心にPBX(構内交換機)を撤去し,日本テレコム内のIPセントレックス装置の利用へ移行する。導入しているPBXの保守契約が終了した拠点から,順次IPセントレックス方式に切り替える予定だ。

図 拠点間の内線通話もIP化 村田製作所は音声VPNサービスを使って拠点間の内線通話を実現してきたが,2004年4月からIP電話/IPセントレックス・サービスに移行を開始。新本社ビルの完成で移行を完了した。


※本記事は日経コミュニケーション2004年11月1日号からの抜粋です。 そのため本文は冒頭の部分のみ,図や表は一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。