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 通信事業の新しい競争政策の姿が明らかになった。郵政相の諮問機関である電気通信審議会(電通審)が7月から2年の期間を設けて検討を進めている「IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方」に関するものだ。

 柱は,(1)市場支配力に着目したドミナント規制の導入,(2)全国に電話サービスをあまねく提供するためにNTT東西地域会社に課している「ユニバーサル・サービス確保の責務」の廃止と基金制度の設立,(3)事業者間の紛争処理機関の新設──の3点。これらの内容を11月16日に公表し,一般から意見を募集した後,12月中旬に1次答申として取りまとめる。NTTグループの経営形態などについては,2年以内の決着を目指して引き続き審議する。

 NTTにとって,今回の1次答申は“アメ”と“ムチ”を混ぜた内容となっている。ドミナント規制の導入は通信事業者による市場支配力の乱用を防止するのが目的で,NTTには“ムチ”の部分。ドミナント規制が課せられると,該当事業者は他のグループ会社を優遇できないように,事業者間で結んだ接続協定や,グループ内の取り引き内容の開示が求められる。市場支配力を乱用する恐れがある事業者がドミナント事業者として規制の対象となる。電話の加入者回線をほぼ独占するNTT地域会社が対象となるのは確実。NTTドコモとNTTコミュニケーションズまで範囲を拡大するかは微妙である。ドミナント規制と同時に,ドミナント事業者に該当しないKDDIや日本テレコムなどその他の事業者については,規制緩和を実施する。現状,郵政相の認可が必要な接続協定やサービス約款などを届け出制に緩和する模様である。

 また,NTT地域会社が課せられている電話のユニバーサル・サービス確保の責務をなくす代わりに,通信事業者各社が出資するユニバーサル・サービス向けの基金を設立する。これはNTT地域会社にとって“アメ”になる。採算の合わない離島などのへき地で電話サービスを提供するために必要なコストをこの基金で賄う。どの事業者でも基金を利用できる格好とするが,事実上,NTT地域会社がユニバーサル・サービスを引き続き確保する役割を担うことになりそう。また郵政省はユニバーサル・サービスの範囲をインターネットにまで拡大するべきかどうか検討していたが,結局ユニバーサル・サービスには該当しないこととした。その代わり,公的資金でインターネットの普及を目指す見込みである。

 そのほか,通信事業者間の紛争処理機関を設置する方針である。2001年1月の省庁再編で郵政省を引き継ぐ総務省内に新設する可能性が高い。政策立案や規制部門から切り離し,紛争処理の専門組織とすることで,公正性を高めるのが狙いだ。

 郵政省は1次答申を取りまとめた後,2001年の通常国会での法改正を目指している。早ければ2001年秋に施行する。

 郵政省は,1次答申でドミナント規制やユニバーサル・サービスを整理することで,最終目標であるNTT法の廃止,完全民営化までの道筋をつけたい考え。その際,NTTグループの完全分割にまで踏み込むかが焦点となる。

(吉野 次郎=日経コミュニケーション)