NTT東西地域会社が同時に値下げに踏み切らなかった背景には,2001年3月度末で920億円の経常損失を見込むNTT西日本の厳しい財務状況がある。NTT東日本は,3分9円への値下げによって120億円の減収になると試算する。NTT西日本にとっては,一段の財務状況の悪化が避けられないため,市内電話サービスの競争が本格化する時期まで値下げを見送った。
一方,NTT東日本が3分9円で値下げを先行させる背景には,すでに同額で市内電話サービスを提供する東京通信ネットワーク(TTNet)に対抗する狙いがある。「首都圏でのシェアを奪還する」(NTT東日本の篠田智・企画部担当部長)と意気込むNTT東日本と,現時点では有力な競合のないNTT西日本の間で,「シェア競争で温度差があった」(NTT東日本の古賀哲夫・営業部長)ことも,両社での足並みの乱れとなった。
市内通話サービスは,現在提供中のNTT東西地域会社とTTNet,九州通信ネットワーク(QTNet)の3社に加え,KDDI,日本テレコム,NTTコミュニケーションズが参入を表明している。各社は8.6~9円の間でサービスを提供する計画である。今回は競合他社と横並びの料金設定となったNTT東日本も,「今後,他社の動向を見ながら価格を設定していく」(篠田担当部長)という考えを示した。
NTT地域会社は同時に,同一県内の市外通話を対象とした新しい割引サービス「スーパーケンタくん」と「ケンタくん5」を発表。2000年12月25日に受付を開始し,2001年1月11日にサービスを開始する。
スーパーケンタくんは,同一県内の市外通話料に対して,月1000円以上の場合に35%,月1000円未満の場合に25%を割り引くサービス。利用料金は,1回線あたり月額200円。ケンタくんは,同一県内の市外通話に対して通話料金の多い上位5電話番号の月間通話料を30%割り引くサービス。ただし,上位5電話番号の合計通話料金が500円を超えた場合のみに適用される。利用料金は無料。
さらに,マイラインと同時に2001年1月10日から受付が始まる電話会社固定サービス「マイラインプラス」のユーザーに対しては,割引率を5%拡大する。スーパーケンタくんは,月1000円以上の場合に40%,月1000円未満の場合に30%,ケンタくんは35%にそれぞれ拡大する。また,スーパーケンタくんについては,月額利用料を無料とする。