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 NTTコミュニケーションズは9月5日,石川県金沢市で9月1日から開始した無線アクセス・サービスのフィールド実験を報道陣に公開した。実験期間は,2003年8月31日までの1年間。個人と法人で合わせて計100組のモニターを対象に,高速インターネット・サービスと電話サービスを無線アクセスで提供する。固定の無線通信(FWA)だけでなく,移動体通信サービスも視野に入れた意欲的な試みだ。

 NTTコムの実験は,米国の無線機器メーカーであるSOMAネットワークスが開発した無線基地局と加入者用無線機器を利用する。無線基地局は金沢市のNTTコムの局舎の屋上に設置し,ユーザー宅に設置した加入者用無線機器との間を,最大5Mビット/秒で接続する。通信距離は基地局から約5km。「加入者用無線機器に外部アンテナをつければ,15~16kmでも大丈夫」(NTTコム経営企画部企画戦略部門の馬場覚志担当課長)という。モニターには,金沢全日空ホテルなども含まれており,宿泊客は希望すれば最大5組まで無料で高速インターネットを利用できる(写真)。

 この無線機器の特徴は,NTTドコモなどが提供する第3世代携帯電話サービスと同じ「W-CDMA」(wideband code division multiple access)を使う点。5Mビット/秒の高速データ通信の他に,電話も帯域を別に確保して2回線分利用できる。携帯電話でも使われ,しかも広域をカバーする無線方式だけに屋外でも使えそうだ。実際,NTTコムは,固定通信用の機器だけでなく,モバイル用に専用PDAやヘッドセットなども開発していく予定だという。

 NTTコムが想定している主なサービス対象は,個人やSOHO(small office/home office)など。“いよいよNTTコムも,無線を使って加入電話事業に進出か?”という疑問が湧くが,NTTコムは「ニーズのある場所を重点的にカバーする」(馬場担当課長)といわゆる“ユニバーサル・サービス”を否定した。また,NTTドコモなど携帯電話サービスとの競合についても,「あくまで主眼はブロードバンド・アクセスの提供」(同氏)と既存の通信サービスとのすみ分けを強調する。

 試みはユニークだが,現実にサービスを商用化するには大きな壁がある。それは周波数だ。今回NTTコムが利用している2.6GHz帯の電波は日本では衛星ディジタル・ラジオ放送用に割り当てられており,近い将来に無線アクセス向けに開放される見込みはない。NTTコムは,「今回の実験の結果を踏まえて,できれば2GHz帯以下の周波数を使えるように総務省に要望していく」(馬場担当課長)という。

(野沢 哲生=日経コミュニケーション)