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F5ネットワークスジャパンのティム・グッドウイン社長は1月21日,日経コミュニケーションの取材に応じ同社の2004年の戦略を語った。五つの戦略ポイントを掲げたが,中でも同社のメイン・ビジネスである負荷分散装置のSIP(session initiation protocol)対応の強化と,昨年10月に出荷を始めたSSL-VPN装置の市場浸透への注力を力説した。
負荷分散装置「BIG-IP」はSIPの負荷分散に対応済みで,IP電話サービスでの採用事例もある。基本的には,SIPのセッションを特定する「Call-ID」を見てセッションを振り分ける。だが今後企業にSIP対応の内線電話やテレビ会議が浸透してくると,内線の保留や転送が発生しSIPプロトコルの解釈や使い方が複雑化。Call-IDの識別だけでは負荷分散に対応できないだろうと予想している。同社は年内に,BIG-IPを全てのSIPアプリケーションの負荷分散に対応させ「競合他社がSIPの負荷分散を可能にしてきても,その1歩先を行く」(グッドウイン社長)としている。
SIPのセキュリティへの取り組みにも自信を見せる。SIPのプロトコル・データを暗号化せずに送信すると,なりすましなどの悪用に遭う可能性がある。現在は多くのSIPサーバーがUDP(user datagram protocol)で通信するため,TCP(transport control protocol)通信上でデータを暗号化するSSL(secure sockets layer)の使用を想定していないケースが多いという。しかし今後はTCPをサポートしSIPS(session initiation protocol over SSL)で通信できるSIPサーバーが増えてくるのではないかと考えている。F5はSSLの技術も持ちSIPSに対応可能。ニーズが出てくればSIPSをサポートする意向だ。
SSL-VPN装置「FirePass」は出荷開始後2カ月半で約50台を出荷し,20台程度という同社の予想を上回った。「Web以外のアプリケーションを利用する際に使う“VPNコネクタ”を別売りではなく標準搭載している点が評価されている」(グッドウイン社長)と分析している。1月20日には日本語完全対応版の出荷を開始した。2004年の機器出荷数は,前年より60%多い2600台を目標としているが,そのうちの600台をFirePassで達成したいと考えている。
アプリケーション層のセキュリティにも力をいれていく意向だ。以前からApplication Security Gatewayというアプリケーション層のデータを保護するセキュリティ装置と,同様の機能のBIG-IPへの搭載を予告してきたが,2004年内に実現する意向である。Application Security Gatewayの具体的な内容についてはまだ明らかにしていない。ブレード・サーバー市場の成長を予想しての取り組み強化や日本独自のソリューションにも力を入れていく。
(山崎 洋一=日経コミュニケーション)