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 「持ち株会社がある限り,NTTは分割されていると言い難い。連結で1兆円も利益があるのに,持ち株会社の和田社長は『苦しい』と何度も訴える。こんなおかしな話があるか」--。ブロードバンド推進協議会(BBA)は1月27日,都内で会員向けの会合を開き,これ までの活動内容や今後の計画などを報告。BBA理事長を務める孫正義ソフトバンク社長が,通信市場が抱える競争上の課題として,NTTグループを激しく糾弾した。

 孫社長が取り上げたポイントは六つ。(1)東西NTTの光ファイバの事業者向け卸売り料金と利用者料金の関係,(2)東西NTTのOSS(顧客管理システム)の開放,(3)持ち株会社と東西NTTの分離,(4)ADSLやFTTHのデジタルデバイド問題を解消する制度の完備,(5)携帯電話の番号ポータビリティなど電話番号に関する規制の在り方,(6)東西NTTとの接続ルールの在り方--である。

 孫社長は予定していた50分の講演時間を1時間近くオーバーして,(1)~(6)の課題を丁寧に説明。その大半でNTTグループ各社を引き合いに出し,市場の発展を阻害していると強調した。

 特に(3)に話が及ぶと,孫社長はNTTのグループ構造が抱える課題を具体的に指摘。「持ち株会社があるから,東西NTTの間で重要な役員人事の交流がある。また,NTTはブロードバンドという新市場にふんだんに広告宣伝などの資金を注ぎ込んでおきながら,その原資は独占状態にある電話事業にまわし,電話接続料で回収しようとする。独占ポジションの乱用だ。公正取引委員会(公取委)は今まで“巨悪”を見逃してきたが,動き出してくれた。これも競争政策のおかげだ」。公取委は2003年12月,NTT東日本にFTTH料金の是正要求を出している。

 孫社長は,もしもNTT各社が有力議員などに働きかけて競争制度の改正をじゃましたり,設備の開放に協力的でないなら,正式に分割するしかないと主張する。「各社の社名を変更して,NTTという名前を外す。人事異動は禁止。『フレッツ』などのサービス・ブランド名も営業もばらばらにする。こうすれば,互いに競争し合う」(孫社長)。

 最後に,「日本のADSLはいまや,世界で一番安くて速い。ところが,固定電話や携帯電話は先進国の中で最も高い。ADSLの時と同じように,技術革新だけでなく,競争制度を変えれば良くなる。このことは1企業が言ってもだめ。協議会のみんなで訴えていきたい」と締めくくった。

 孫社長の講演には,聞き手に若干誤解を生じさせかねない部分もあった。例えば,携帯電話料金が他の先進諸国よりも高いという主張には異論も多い。いずれにせよ,様々な競争制度の見直しを早急に検討しなければならないのは確かだろう。

 また,この講演では「NTTドコモは全国で使える電波を,総務省から無料でもらってる。ソフトバンクも総務省に申し込んでいるが,なかなか割り当ててもらえない。携帯電話市場への参入の自由が欲しい」と,孫社長が携帯電話事業への進出を本気で考えていることを示唆する一幕もあった。

(杉山 泰一=日経コミュニケーション)