PR

 慶応義塾大学医学部と国立病院機構東京医療センターは5月12日,商用回線を利用した遠隔共同手術を3月25日に実施したと発表した。手術は東京医療センターで胆石症の49歳の女性に対して行った。慶応大学側の指導医はネットワークを介して内視鏡操作を担当し,音声と映像を使って遠隔指導した。遠隔地にいる指導医がネットワーク経由で内視鏡操作を担当した遠隔共同手術は国内初だという。

 遠隔共同手術は,現場の医師と遠隔地の熟練の医師が共同で実施できるため,患者の居場所によらず高度な医療を提供できるメリットがある。特に内視鏡手術では,内視鏡で適切な個所を映し出しながら手術することが必須だが,これは熟練医でなければ難しい。また,他の病院の医師が手術に関わることで診療の公開性が高まる。「内視鏡手術による事故は,手術が第3者の目に触れないために起こる。遠隔共同手術はこうした事故を防ぐ有効な手段もになる」(慶大の北島政樹医学部長)。

 ネットワークには,日本テレコムの広域イーサネット・サービス「Wide-Ether」を採用した。アクセス回線は同社のイーサネット専用線「Etherアクセス」の100Mビット/秒品目。このほか,オリンパスが内視鏡と遠隔制御システムを,シスコシステムズがネットワーク構築のアドバイスを,フォーカスシステムがセキュリティ・システムをそれぞれ担当した。

 慶応義塾大学法科大学院・医学部外科助教授の古川俊治氏は,「普及のためには安価なシステム作りが不可欠。ADSL(asymmetric digital subscriber line)によるインターネットVPN(仮想閉域網)に高度な暗号化方式を組み合わせた安価なシステム構築に取り組みたい」と意気込みを語った。

(山根 小雪=日経コミュニケーション)