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 10月23日午後6時前に新潟県中越地方で発生した地震による通信インフラの障害は,通信事業者に様々な決断を迫った。新潟県をエリアとする東北電力系の通信事業者,東北インテリジェント通信(TOHKnet)もその1社。同社は,被災地に約300の企業や自治体をユーザーとして抱えている。

 被災地に該当するTOHKnetの拠点は,長岡,柏崎,十日町,六日町の4局。いずれも東北電力のビルなどに設置してある。地震が発生した直後,それぞれの局で一斉に電力供給がストップ。東北電力の商用電源から予備バッテリーに切り替わった。

 しかし予備バッテリーのままでは,いずれ切れてしまう。そこで新潟営業所の遠山八元所長は,各局に電源を供給する電源車の出動を即座に決断した(写真右の上)。実際に,新潟市や福島県,山形県から一斉に各局へと電源車を向かわせることができたのは,地震発生から1時間後の午後7時(写真右の下)。各局の予備バッテリー持続時間は,最も短い長岡で8時間,最も長い六日町でも24時間である。一方,新潟市から長岡市までの所用時間は約1時間だ。普段であれば十分な時間がある。

 ところが搬送作業は難航した。幹線道路が一部通行止めになっており,「う回してもその道が封鎖されているということの繰り返しだった」(瀬倉真一副所長,写真下の左)。さらに「山間部は暗闇で,道路の陥没も見えない危険な状態」(遠山所長)。そこで瀬倉副所長が陣頭指揮を取り,関係車両からの情報で被災地付近の道路状況を収集(写真下の右,赤い×が通行止めの場所)。各電源車にルートの指示を出していった。地震発生直後だったため,行政や警察ですら情報は収集できていない。情報は自らで集めるしかなかったのである。

 結局,電源車は午後11時から翌午前3時までに各局に無事到着した。これで予備バッテリーが切れるという最悪の事態は回避した。

 しかし問題は電源だけではなかった。各局の停電の報告とともに,小千谷市と小国町の間を結ぶ光ファイバの回線ルートが消失したとの報告が入ったのだ。ルート上の電柱が土砂で流されてしまったという。回線は2ルートを確保しているため,サービスの中断には至らない。しかし小千谷-小国に代わるルートをできるだけ早く確保しなくてはならない。さらなる余震の発生を考慮すると,1ルートが確保されているだけでは心許ないからだ。この新ルートの確保も23日午後11時には解決した。

 こうして次々に発生するトラブルに対処するため,TOHKnetは緊急の監視体制を敷いた。新潟営業所の職員を徹夜で待機させたのだ。この緊急体制は,地震発生から丸3日間,10月26日まで続けられた。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション