PR

 「本店を含めて11の店舗が大なり小なり地震の被害を受けた」──。

 震源にほど近い長岡市に本店を構える北越銀行(写真右)。同行の田鹿紀之総務副部長は,神妙な面持ちで被害について語り始めた(写真下の左)。北越銀行は,新潟県内に80以上もの店舗を構える地域の大手金融機関。それだけに被災地にも多くの店舗を持つ。

 中でも大きな影響を受けたのは,やはり震源地にある小千谷市の2店舗だ。越路町,津南町,六日町,大和町の店舗も大きな被害を受けた。現在も小千谷市一帯は停電が続いている。しかし軽油を使う自家発電で,店舗とATM(現金自動預け払い機)に電気を供給。「月曜日(10月25日)の朝から通常通り営業している」(田鹿副部長)。

 田鹿副部長は,「幸いにも銀行業務への影響は最小限にとどまっている」と安堵の表情も見せる。

 まず地震が発生したのが店舗やATMを営業していない土曜日の夕刻遅くだったことが幸いした。ATMは停電発生直後から自動的に自家発電に切り替わっていたため,日曜日はそのままサービスを継続できた。各店舗も,土曜日の夜から被害状況の確認作業を始め,日曜日に後片付けを実施。月曜日の朝には県内85のすべての支店で通常通りの営業を始めることができた。目立ったトラブルといえば,「停電中の長岡市の1支店で自家発電機が故障。日曜日にATMが使えなかった」(田鹿副部長)ことぐらいだという。

 ホスト・コンピューターを設置したセンターが震源地に近いところにあったものの,「ビルが免震構造のため被害はほとんど受けなかった」(事務統括部の小林洋一副部長)。センターと各店舗を結ぶ通信回線も「まったくと言っていいほど問題がなかった」(小林副部長)。NTT東日本のディジタルアクセス専用線からバックアップのISDN回線に一時的に切り替わったケースがあるが,回線が断続的に利用できなくなることはなかった。

 もっとも「まだまだ気が抜けない」(田鹿副部長)状況であることに変わりはない。27日には,震度6弱の強烈な余震が発生している。築40年で7階建ての北越銀行本店では,3階以上のフロアでの執務を禁止。2階の講堂に机と電話を持ち込み,頭にヘルメットをかぶりながら仕事をしている。窓口の従業員も,脇にヘルメットを置きながらの顧客対応だ(写真下の右)。また,約1600人の行員のうち1割弱の117名が被災。13名は家屋が全半壊しているという。

 取材中も脱出路を確保するために,部屋の扉は開けっ放しだった。そして実際に,取材中にも余震が発生した。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション