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 総務省は1月31日,電力線通信(PLC:power line communication)の実用化を目指す「高速電力線搬送通信に関する研究会」の第1回会合を開催した(写真)。傍聴は立ち見が出るほどで,約2時間に渡り熱い議論が繰り広げられた。今年10月をめどに実用化の判断を下す。

 電力線通信は10k~450kHzを使う低速タイプが国内で既に実用化されている。今回議論するのは,2M~30MHzの高周波数帯を利用する高速電力線通信だ。この周波数帯はアマチュア無線や短波放送など,他の無線が利用しているため,干渉問題が懸念されている。

 総務省は2002年にも高速電力線通信の実用化を検討する研究会を開催した。だが他の無線への影響が大きすぎるとして,実用化を見送った経緯がある。一旦は実用化を見送ったものの,電力会社やモデム・メーカーを中心に構成する「高速電力線通信推進協議会(PLC-J)」などが,漏えい電界強度を低減する技術の開発や実証実験を継続してきた。今回,技術開発が進み一定の成果が得られたとして,再び研究会が開催されることになった。

 会合ではPLC-Jと九州電力が,漏えい電界強度の低減技術の現状と実証実験の結果について報告した。九州電力の実験では,建物の形態や周辺環境が異なる三つの家屋で,合計37カ所に電力線モデムを設置。「100点を超えるデータを測定したが,いずれも目標に設定した微弱無線局許容値を下回った」(九州電力)。

 研究会の座長を務める情報通信審議会CISPR委員会主査で東北大学電気通信研究所教授の杉浦行氏は,「前回の議論から2年以上が経過し,漏えい電界強度は以前よりも20dBほど抑えられるようになっている。これが妥協できるレベルかどうかを今後検討したい」とコメント。今後の議論の焦点は,漏えい電界強度の許容値をめぐる議論になりそうだ。

 なかでも,「既存の微弱無線レベルを高速電力線にも適用できるのか」という議論は一筋縄ではいかない。というのも,微弱無線レベルは機器単体から漏れる漏えい電界に対する数値。研究会の構成員で情報通信審議会COSPR委員会Iグループ主任の雨宮不二雄氏は,「今回のケースはモデム単体ではなく,モデムにつながる線からの漏えいが問題。微弱無線レベルを下回っているからいいとは言えないのではないか」としている。

 このほか,アマチュア無線連盟や短波放送関係者などからも,実証実験の条件や漏えい電界の測定方法などに対して,多くの意見が出された。

 研究会の参加者からは,「実験条件や測定方法は議論を詰めれば結論が導けるだろう。だが,許容値の落としどころを見つけるのは相当大変そうだ」という声が聞こえてきた。第2回会合は2月23日の予定。

(山根 小雪=日経コミュニケーション