NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は3月2日,IP-VPNサービス「Arcstar IP-VPN」で同報配信を実現する「マルチキャストVPNサービス」を3月3日より受付開始し,順次提供すると発表した。IP-VPNの実現技術であるMPLS(multiprotocol label switching)上でマルチキャストを提供するのは,「商用サービスとしては国内初」(NTTコム)という。
マルチキャストとは,一つのパケットを同時に特定かつ複数の受信者に送信する技術のこと。ソフトバンクBBの「BBTV」やKDDIの「光プラスTV」など,IP放送の実現技術としてIPネットワーク上で利用されている。だがMPLS上でのマルチキャストは課題とされてきた。
NTTコムは,MPLS網内で米シスコシステムズのMPLS対応ルーターを採用している。シスコシステムズがルーターOS「IOS」にマルチキャストMPLSを実装したことから,サービス提供が可能となった。「ルーターに実装したマルチキャストMPLS技術は,現在シスコシステムズがインターネット技術の標準化団体IETF(Internet Engineering Task Force)にドラフト(草案)提案しているもの」(NTTコム)である。
Arcstar IP-VPNでは,これまでIPマルチキャスト機能をオプションで提供してきた。MPLS網とは別のIPネットワークを用意してサービスしていたため,ユーザーは通常のIP-VPNのアクセス回線とは別に,マルチキャスト専用のアクセス回線を用意する必要があった。今回提供する新サービスを利用すれば,MPLS網上でマルチキャストを提供するので,別途アクセス回線を用意しなくて済む。
月額料金は,利用回線ごとに2万1000円。送信機能を利用する場合は,マルチキャスト・トラフィックの送信帯域の上限によって料金が異なる。1Mビット/秒きざみで1M~10Mビット/秒,20Mビット/秒の品目を用意している。月額料金は,1Mビット/秒で1万500円,20Mビット/秒で21万円。まずは首都圏からサービスを提供する。2005年4月以降は全国展開する計画だ。