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写真1
写真1●「Yahoo! BB 光」を発表するソフトバンクBBの孫正義社長
 ソフトバンクBBがFTTH(fiber to the home)サービス「Yahoo! BB 光」を発表(写真1)してから5カ月あまり。高速・格安のADSL(asymmetric digital subscriber line)サービスで鮮烈なデビューを飾った時と比べると,Yahoo! BB 光の存在感はいかにも薄い。

他社と変わり映えしないサービス

 まずサービス・スペックでは,当初こそ最大1Gビット/秒のアクセス回線を複数ユーザーで共用する方式を真っ先に採用したことにより,「世界初のギガ・サービス」(ソフトバンクBBの孫正義社長)と高速性をアピールできた。だが,東西NTTやKDDIもすぐに同じ方式で追随。さらに近畿圏でFTTHサービスを提供するケイ・オプティコムは試験ながら,ソフトバンクBBより高速なサービスを4月から提供する。ユーザー宅内端末のインタフェース速度がソフトバンクBBの100Mビット/秒に対して,ケイ・オプティコムは1Gビット/秒。ADSLの時のようにサービス提供のスピードで大きくリードできる雰囲気はない。

 3月8日に受け付けを開始した,「無線 TV BOX」と呼ぶ無線LAN付きのテレビ・チューナーを標準でセットにしたメニューは,他社との差異化を図れるポイントの一つ。ただ,ADSLでのIP電話のような,多くのユーザーが初めから魅力に感じるサービスではない。ネットでの映像配信サービスが大きく育つにはまだ時間がかかる。

利用料金は他社よりむしろ割高

 Yahoo! BB 光は利用料金も平凡だ。戸建て住宅向けサービスでは月額7234円と,他社並みかむしろ割高。「03」など既存の電話番号が使えるIP電話サービスの料金を合計すると,割高感がいっそう際立ってしまう。

 これは,IP電話サービス「BBフォン光」の基本料金を月額1627円と高く設定したため。ソフトバンク・グループは現在,総力を上げて日本テレコムの新型固定電話サービス「おとくライン」の販売に力を入れている。これとの競合を避けるために,BBフォン光の基本料金を高めに設定しなければならなかったようだ。

光ファイバを自ら敷設して自由にサービスを展開か

 もっともソフトバンクBBには,料金競争を仕掛けたくても仕掛けられない事情もある。特に大きな理由は,東西NTTから光アクセス回線を借りてFTTHサービスを提供していることだ。東西NTTに支払う光アクセス回線の利用料(接続料)は月額5000円以上。このコストを織り込んでサービスを提供すれば,料金設定には制約が付かざるを得ない。

 このため,ソフトバンクBBは「次の一手」として,自分で光アクセス回線を敷設する道を探っている。自前の光ファイバ網を張り巡らせれば,初期投資の費用は膨大になるものの,料金設定やエリア展開の自由度は大幅に高まる。戸建て住宅向けFTTHサービスを月額4900円で提供する,ケイ・オプティコムのような料金設定も可能になる。

 既にソフトバンクBBが周到に準備を進めている可能性も十分にある。NTT西日本のある幹部は,事業者の名前を伏せながら,「現在,光ファイバを引くための電柱の利用条件などについて,ある事業者と交渉している」と明かす。

電柱の利用条件が自前で敷設する際の壁に

 孫社長も本誌の取材に対し,「我々だってFTTHサービスでユーザー宅と局舎に対する様々な設備投資をしている」と強調。光アクセスを自前で敷設する可能性を否定しない。ただし,「電柱などの利用条件が東西NTTと平等になれば」(孫社長)と留保条件を付ける。

 ソフトバンクBBが光ファイバを自前で敷設する際には,規制の壁が立ちはだかる。自ら電柱を保有し,管理する東西NTTや電力会社と比べると,ソフトバンクBBは自由に電柱を利用できない。つまり,光ファイバの敷設を思い通りに進められない。

 東西NTTは,電話用銅線を張るための専用スペースを保有している。このスペースに銅線と束ねて敷設すれば,他社と調整せずに光ファイバを敷設できる。一方,ソフトバンクBBは東西NTTとは別のスペースを,競合事業者と共用する。複数の事業者と共用する時には調整が必要になり,光ファイバを敷設するスピードで後れを取るわけだ。

総務省も光アクセスの敷設を後押し

 ソフトバンクBBの光ファイバに対する意向を知ってか知らずか,最近になって総務省が新たな動きを見せ始めた。東西NTTの設備を安価に他事業者に開放させることを徹底する従来のブロードバンド競争政策を少し改め,事業者各社に光ファイバを自前で敷設させるための施策を打ち出しているのだ。

 まず2004年12月に東西NTTからの認可申請を受ける形で,東西NTTの光ファイバの貸し出し料金の一部を改定した。月額料金だけを取る形態から,初期費用と月額料金を徴収する形態に改めた。借り手となる業者にとっては,初めに負担する料金の割合が大きくなった。

 総務省はさらに,光ファイバを引く通信事業者が電柱を利用しやすくなるよう,電柱や管路の利用条件を定めた開放ルールの見直しにも着手。現在,「東西NTTに3月中に改善案を出すよう求めている」(総合通信基盤局電気通信事業部の鈴木茂樹料金サービス課長)。この改善案を基に,2005年度に具体的な対策を打ち出す考えだ。

 見直し案がどのような内容になるか,それに対するソフトバンクBBの反応がどうなるか。2005年前半の動向が今後の日本のFTTHサービスの行方を大きく左右することになる。

(島津 忠承=日経コミュニケーション

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