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 調査会社大手,米ガートナーのマイク・ハリス リサーチ・グループ・バイスプレジデントは,世界の通信業界の動向を調査するコミュニケーションズ・リサーチ部門を率いるトップ(写真)。ハリス氏に世界の通信事業者の動向を聞いた。

--米国ではAT&Tが米SBCコミュニケーションズに,MCIが米ベライゾン・コミュニケーションズに買収され,長距離通信事業者が次々と姿を消している。長距離通信事業者の“消滅”は世界的な流れなのか。

 AT&T,MCIが生き残れなかった最大の理由は,両社が顧客までのアクセス・ラインを保有していなかったことにある。特にAT&TはCATV事業者を買収したり,携帯電話事業を強化しようとしたが,アクセス・ラインの整備には予想以上の大投資が必要だった。その途上で通信バブルがはじけてしまったという不運も重なった。

 一方で,SBCコミュニケーションズやベライゾン・コミュニケーションズなどの地域系通信事業者は,長距離通信事業者の設備を借りることで,比較的容易に長距離通信事業に打って出られた。

 これらの背景に加えて,IP化が距離の概念を意味のないものにした。その意味で,長距離という概念そのものが成立しなくなってきていた。

 ただし,彼らが消滅した理由は両社固有の事情もある。それは,あまりにも既存の電話事業に依存しすぎたこと。IP時代を見据えた付加価値サービスなどへのシフトにあまり積極的ではなかった点だ。

 この点が,日本の長距離通信事業者であるNTTコミュニケーションズ(NTTコム)と違うところだ。NTTコムは,早くからソリューション・サービスを積極的に提供してきた。米国の長距離通信事業者と同じ状況にはならないだろう。

--固定通信と移動体通信を融合する「FMC」(fixed mobile convergence)をキーワードに掲げる通信事業者が増えている。

 FMCという言葉そのものは,コンセプトに過ぎない。通信事業者が具体的なサービスとして提供するのはこれからだが,英BTの「Bluephone」(「BT Fusion」という名称でサービス開始)などがそれに当たる。同一の携帯電話端末で固定と移動,両方のネットワークを利用できるものだ。ただし,FMCは端末だけでなく,固定と移動の料金請求一元化などサービスの一体提供も含んでいる。

 もっとも,FMCの本質は固定通信事業者の移動通信進出にある。回線の低廉化で収益が減少し続ける固定通信事業者が,何とか移動体通信の収益を獲得したいというのが実態だろう。現に,FMCとうたっているのは固定通信事業者だけだ。

--世界の企業は無償IP電話ソフト「Skype」をどう評価しているか。

 注目度はかなり高い。米国,欧州など地域を問わず世界中の企業から,「Skypeとはどんなソフトなのか」という問い合わせを受けている。通信事業者にとっては,やっかいなソフトだろう。通信事業者自身が大きな投資をして敷設したインフラの上で,一番うまみのある通話料部分をSkypeに奪われているからだ。

 ただし,Skypeによって通信業界そのものが成立しなくなるとは考えられない。影響は限定的だろう。だが,Skypeなどの新技術の登場が,通信業界のビジネスモデルに変化を促すことは間違いない。

 米国では,米アップルの音楽配信サービス「iTunes」によって,音楽ビジネスがそれまでのCD販売からネット配信へと劇的に変わっている。おそらく通信業界もこのような変化を促されるだろう。音楽ビジネスそのものはなくなっていないが,従来のビジネスモデルでは事業継続が難しい。通信業界もこれと同じことが起こるだろう。