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 総務省は8月18日,電力線通信(PLC:power line communication)の実用化を目指す「高速電力線搬送通信に関する研究会」の第7回会合を開催した。高速電力線通信では,2M~30MHzの周波数帯を利用する。この周波数帯はアマチュア無線や短波放送,電波天文など他の無線が利用しているため,電力線通信がこれらの無線システムへ与える影響が懸念されている。

 今回も推進派と反対派の議論は紛糾。開始から8カ月が経過した今回の研究会でも,電力線通信の漏えい電磁波の規制値については,折り合いがつかず,結論は持ち越しかと思われた。だが,研究会終了間際に座長を務める東北大学電気通信研究所の杉浦行教授から新たな提案が出された。

 それは「コンピュータの電源ケーブルから漏えいする雑音レベルをたたき台に値を検討する」というもの。電源ケーブルからの雑音については,漏えい電磁波の測定方法と規制値を規定する「CISPR」で国際的に規定済み。この規制値は,推進派と反対派がそれぞれ主張する値のほぼ中間にあたる。推進派にとっては,悲願であった高速化はおろか「実用的な通信はできないレベル」(推進派)。反対派にとっても,主張していた保護基準値とは,ほど遠い。

 杉浦座長は「推進派と反対派の折り合いがつかないのなら,国際規格を規制値に据える以外にない」(杉浦教授)としたが,急な提案に推進派,反対派とも困惑を隠し切れなかった。「余りに乱暴ではないか」という声も構成員からは飛び出したが,「乱暴なのは承知している。だがコンピュータからの雑音レベルなら誰も文句は出ないはず」(杉浦教授)と押し切った。

 研究会では,緊急に作業班を設置し,この値をたたき台に早急に検討することになった。作業班は,研究会で中立の立場をとるCISPR委員の雨宮不二雄氏,電気通信大学の上芳夫教授,CISPR委員の山中幸雄氏の3名と座長で構成する。

 研究会を取りまとめる総務省電波環境課の富永昌彦課長は,「折り合いが付かないときは中間点を落としどころにするのは国際的にも筋の通った考え方だ」とした上で,「日本のメーカーは本当に素晴らしい技術力を持っている。何らかの解決策を見いだしてもらえると信じている」と期待を語った。

 総務省は9月中にも方向性を固めて,10月にはパブリック・コメントを募集したい意向だが,次回会合の開催日は未定。作業班の結論に注目が集まる。

(山根 小雪=日経コミュニケーション