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■まずは原課と調達行為を分離(神戸市)

安延 芝さんは、経済産業省の情報システム調達モデル研究会の委員でもあります。調達ルールの明確化を目指す、「調達ガイドライン」と「評価指針」を策定し、随意契約や超安値落札を防いで、適正価格で適正なシステムを調達するアプローチをしています。

 そこで本題です。一般的に入札で5社くらいが応札すると、必ず1社くらいとんでもない安い価格で入札するベンダーがあります。調達側から見た適正な価格と適切な仕事量と、それから応札側から見たリーズナブルな価格とそれなりの利潤の関係は、調達改革の結果どのような状況になるのか、教えてください。

芝氏写真
芝勝徳氏
(神戸市企画調整局情報企画部高度情報化担当主幹)

芝勝徳(神戸市企画調整局情報企画部高度情報化担当主幹) 神戸市には島村さんのような人材はいないし、財政的に大規模なアウトソースもできません。大多数の市町村の立場で見ても、現状で、どれくらいが適正か限界かという判断が、ほとんどまだできていないと思います。

 ですが、調達に関する情報を標準的に記述したり、テンプレートを作ったりして、みんなで情報交換すれば、だれもが同じように調達作業をできるようになると思います。例えば、ある項目についてはこのぐらいであるとあらかじめ値付けしてしまって、原課(すなわち欲しい部署)と調達する行為を分離します。今は原課が予算を作成・要求して、原課の担当者がベンダーから調達し、システムを構築します。その作業を、統合調達チームという組織に任せて、予算要求時あるいは実際の調達のときに、適正かどうかを判断させるという考えです。このやり方は、建設/土木の公共事業の分野では何十年も前に制度化されています。なぜIT業界ではいまだに取り組んでいないのか不思議です。

■指定管理者制度における発注をどうするか(神戸市)

安延 結構悩ましいのは、予算が縦割りになっている点です。厚生とか土木などです。電子化だからといっても、従来の分け前が多い部署はI T予算も多い傾向を乗り越えられず、うまくいかない自治体の話をよく聞きます。

島村(長崎県) 確かに全部のIT関連予算を握るのは不可能なので、まずほかの部署の、いわゆる電子自治体に関係する予算を取ってしまうことから始めます。例えば文書管理の仕事は本来、総務文書課の担当ですが、情報政策課でそのシステムを作るからということで、その分の予算を取ってしまいます。

 まず取れる予算はできるだけ取ってしまうのです。こんな例もあります。たまたま知事から大学のシステム再構築の事業を聞きまして、私には全く権限はないですが、まず全部の予算を取って調達手法を全部変え、コストをこれまでの半額にしたわけです。こうした事例をいくつか作って、方向付けをしてしまうのです。前例ができれば、ほかの部署にも必ず波及します。

 しかし、それでも予算を取れない部分はあります。教育庁や保健関係、土木関係ですね。そこにはシステム発注のモデルをこちらから提示します。「県としてこのような発注方式に変えたので従ってください」と伝えます。

 始めから簡単にはできないので、「この手順で仕様書を作ってください」とこちらで説明し、無理を言ってとにかく作成してもらった仕様書をモデルにしてしまいます。

芝(神戸市) 別の問題として今、市町村にとって非常に重要なのが指定管理者制度における発注の問題です。例えば図書館のように今まで行政が直営していた施設の管理を外部委託するような場合です。この場合、システムを調達してから委託先の指定管理者に任せるのか、それともその指定管理者が保有するシステムを利用して管理してもらうのかによって、システム調達の主体が変わってしまいます。後者の場合は、もうシステム調達ではないので、判断が非常に難しいと思います。

山地(大阪府) 大阪府では、電子自治体で、入札や契約の集中化を進めています。予算が多少集約されるようになりました。今後も、契約業務は一括して処理していきます。それともう一つ、今苦労してファンクションポイント法という積算手法を導入し、入札時の積算をいかに適切にできるか取り組んでいます。国からモデルが提示されると、ありがたいと思っています。

安延 ある省庁では、システム構築に参加する技術者の源泉徴収票を提出させ、いまだに昔ながらの人月単価を計算しています。これではベンダーは赤字になってしまうということが分かっていない。まあ、国から調達の現状を変えていくのは大変でしょう。地方から先に変えていくしかないと思います。