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文・清水惠子(中央青山監査法人 シニアマネージャ)

 機能構成図(DMM)と機能情報関連図(DFD)は、本来、何のために作成するのであろう。システムを作成してきたベンダーもユーザも、現業の作業の流れをそのまま記述したフローチャート(WFA:業務流れ図)があればDFDは不要ではないかとの疑問もあるようだ。

 WFAは組織や役職を記述するが、DMMとDFDは組織や場所は記述しない。組織や場所にとらわれないで、純粋に作業を分析することにより、業務の目的を達成するために本当に必要なファンクション(働き)を見出すことができるのである。DMMとDFDは業務改革/改善の強力なツールである。業務改革/改善点を検討する作業として、抽象化と論理化の理解がキーになる。

■DMMは業務改革/改善のツールである

 まず、DMMにより、トップダウンで業務を分析する。この段階で、ある目的を達成するために必要なファンクション(働き)は、何かを考える。例えば、購買業務を考えると、注文する手段が電話化ファクシミリかEDIかは問題にしない。どの組織の誰が注文するか、注文するモノがサービスか鉄鋼かも問題にしない。モノもサービスも購入するためには、“注文する”というファンクション(働き)がないとできないことに注目するのである。

 ”注文する”というファンクション(働き)を実際の現場では、電話やファクシミリ、EDIなどそれぞれ異質な点を持つが、その異なる点は排除して“注文する”という共通の働きで一つのファンクションとしてくくることになる。この作業の段階で、意識しないうちに業務を分析整理し、グループ内での共通の言葉と定義付けを始めているのである。

 電話注文とか、FAX注文とか異なるものに同じ発注という名前をつけてくくることを抽象化(言語学上の用語)と言う。注意すべきは最初のDMM作成段階で、枠が8個しかないことから、ファンクション(働き)は最大限8個にくくられることだ。この8個にする作業時に、ある程度の抽象化が行なわれることになる。DMMの8個のくくり方が適切であるかどうかは、実は一つ下位のDMMを作成することで検証される。なお、分析の結果、8個以下になっても構わない。

■(例)購買のDMM 0レベル
計画 業者
選定
発注
支払
購買
検査
請求受 現業納品 返品

■機能階層のイメージ
機能階層の図
政府の業務・システム最適化計画策定指針(ガイドライン)第2版」より抜粋の図表に追加

■DFDで、情報のつながりをみる

 DFDとは、ある目的を達成するための業務と情報の流れを表す。システムは何らかの業務(販売、購買)の目的を達成する経営資源(ヒト、モノ、カネ)の集まりである。経営資源(ヒト、モノ、カネ)の状態は発注というファンクションにより変化し、情報はある特定の製品が注文された状態であることを表わす。つまり言い換えると、DFDはファンクション(働き)とファンクション(働き)によって変化する経営資源(ヒト、モノ、カネ)の状態を情報として表すものである。

 DFDを作成する際には、DMMのファンクション(働き)を、DFDのファンクションとして書き込こみ、ファンクション間の情報の流れを書き込んでいく。これは業務が一連の口頭、文書、入出力などによるコミュニケーションにより行なわれていることを示すものである。ファンクション(働き)はなんかのきっかけにより動き始める。このきっかけとなる外からのイベント(起因事象)をDFDのの外側に書くことになる。

■図2-23 機能構成図(DMM)と機能情報関連図(DFD)の関連を示した図
機能構成図と機能情報関連図の関連を示した図
(「経済産業省「EA策定ガイドラインVer1.1」より」)より

■システム(経営資源の状態)とファンクションの関係
システムとファンクションの関係をあらわす図
(「経済産業省「EA策定ガイドラインVer1.1」より」)を基に作成

 DFDの作成は、こうした業務と情報の流れの不合理を明確に分析し、組織を意識しないで、あるべき姿に業務をくくりなおすことにある。この業務のくくり直しが論理化であり、業務改善/改革である。政府のガイドライン(業務・システム最適化計画策定指針第2版)ではこの論理化を「業務処理の組替え」と言っている。

■論理化のステップ

 論理化の目的は業務改善/改革である。業務改善のためには組織の壁を超えてどこまで業務の流れを止めないでできるかの分析を行なう。このためには、DFDで記述される業務の流れを、何らかの理由で時間待ちになるまで、業務をまたいだとしても、一人で全てを行なうことができると考え(論理化)、くくるのである。

 業務の効率化は基本的に一人ですべてができることにある。一人で全てできるとは、情報の滞留がないこと、作業を止めないでできることを意味する。

 一人でどこまで作業を止めないで実行することが可能かになるかが重要である。例えば、連載第3回目に紹介したデンマークのポータルも、保育サービスのサイトに住民が申し込みをすると保育サービス待機リストに登録されると同時にその情報はケースワーカーに転送される。これはポータルが一人で情報を止めないで保育サービスへの登録とケースワーカーへの登録の二つのサービスを提供していることになる。

 この一人ですべてできる状態が、DFDの情報の流れが止まらないことを意味する。

 これは、(一人でやりとりをすることを前提とするため)単純なインタフェースで、ファンクション間で結ばれたDFDを作成することにより明確になる。

■業務処理の組替え
業務処理の組替えの図
※業務処理における情報の流れのうち、主要な情報の流れを中心とした業務処理の組替えを行う。再構成された機能群(上位の階層の機能)に当該機能群を構成する機能を抽象化した名前を付与する。

記号 説明 記号 説明
ファンクションを示す
(「~する」という動詞表現になる)
情報の流れを記述する
(情報には情報名を付けて記入する)
ファンクション 情報の流れ
対象とするシステム範囲から見た外部環境で、外部のシステム、人、組織など、情報の発信地や受信地を示す 情報の一時的な貯蔵であり、情報の滞留を示す(一本線のファイルは、ファンクション内に限定しているファイルを示す)
ターミネータ ファイル

 DFDを作成した際に、情報の流れが現状ではきれいに繋がらない場合がある。例えば、予算は策定されていても、その予算と実際の購買の発注が結びついていない場合は、予算書というアウトプット情報は、購買の中では他のファンクションには繋がらない独立のものになる。現状のDFDの作成により、こうした情報の流れが明らかになり、情報が手戻りするような業務の流れを整理すると効率的な業務の改善が実施されるようになる。

 機能情報関連図(DFD)の論理化は、作業の流れを整理して時間待ちや作業の重複を排除する。システム化の前提として論理化は必須である。論理化しない業務のままでシステムを作成すると、重複した業務もそのままシステム化される。業務の目的を達成するために、本来は必要ないステップを踏むことになり、システム化の費用も高くなる。

 DFDを作成する場合に最も重要なポイントは現業の担当者の参画を得ることである。業務を一番知っているのは、現業の担当者であり、現業の担当者の同意を得て業務の改革は遂行されるからである。3回目で紹介したデンマークの成功の秘訣は、この現業の参画と業務改善への理解である。

 DFDは、「ベンダーが作成するものではなく、専門家の指導を得て現業の担当者が作成するもの」なのである。自らの業務の分析と統合をこのDFDの作成で実施することにより、ベンダーまかせではないシステムつくりの第1歩を踏み出すことになる。

清水氏写真 筆者紹介 清水惠子(しみず・けいこ)

中央青山監査法人 シニアマネージャ。政府、地方公共団体の業務・システム最適化計画(EA)策定のガイドライン、研修教材作成、パイロットプロジェクト等の支援業務を中心に活動している。システム監査にも従事し、公認会計士協会の監査対応IT委員会専門委員、JPTECシステム監査基準検討委員会の委員。システム監査技術者、ITC、ISMS主任審査員を務める。