■トップダウンの組織でゴーサインを出す
![]() |
──札幌市は、「日本で初めてITを活用した本格的な自治体CRM(Customer Relationship Management:顧客情報管理)をIT経営戦略のバックボーンに据えている」とうたっていますね。
福迫 私たちは、役所をカスタマーの志向に変えていくことを考えました。私たちと市民との間の信頼関係を、きちっと作っていく必要があるということですね。それがCRMの一番の基本的な動作だと考えたんです。
それが実現できれば、今度は市民からの要望がいろいろ出てきます。そうした市民ニーズを蓄積して、それを私たちの次の施策に生かしていかなくてはいけません。
課題を解決していくのも、今までのように我々だけで全部やっていくのではなくて、市民の方々にも役割分担していただく、ということです。いわゆる“市民自治”を発展させていく。さらに、市の施策の立案にも市民に参加していただくし、それから次は途中の経過のチェック、そして最終的には評価も市民にしていただく。これが私たちとしての最終の到達点になると思っています。
──市民の中には、市役所に全部お任せでいいと考える人もいるのではないでしょうか。
福迫 これまで役所は、「(市民は役所に)要求をしていいですよ。こちらに任せればやってやるよ」という姿勢でしたよね。その背景には「お金もあったからできた」ということもあったと思うんですよ。
ところが、もうそうは言えなくなってきました。市民も行政に依存はできなくなるということです。札幌市も2兆円以上の借金があります。ですからまず行財政改革は必要です。一方で、やっぱり私たちが情報を全部公開する。そして、一緒になって町をつくっていこうじゃないか、という姿勢を市民に理解してもらうことが必要なんです。
──そのためのITを使った施策の一つとして、コールセンターを置いたわけですね。このコールセンターをはじめ、IT施策を実施していくうえで、札幌市でCIOはどのような役割を果たしているのですか。
福迫 私は3年前に前市長(桂信雄氏)にCIOとして呼んでいただきました。その時に、局長、区長全員がメンバーに入った「IT推進会議」を作っていただきました。そしてCIOである私が議長に就きました。
ここで札幌市のITに関するすべての施策について審議・決定を行います。ですから、ここで決定したものが、全庁的なゴーサインになる。そういう形です。
■札幌市のIT戦略推進体制 |
![]() |
──全局長・区長が出席することで「そんな話は聞いてないよ」といった“抵抗”を防ぐことができるわけですね。
福迫 そういうことです。今までのような縦割りの伝統的な行政組織では、コールセンターのような新しい施策を進めることはもう不可能です。横断的な了解を得た上で、トップダウン的な形にしなくてはならないんです。
コールセンターについて言えば、係長・課長クラスの若い人たちの話から構想が出てきまして、そしてそこで盛り上がっていきながら、CRMを核としたIT経営戦略という方向性が出てきたわけですね。いろいろ関係がある部局の係長が集まって進めていたんですけれども、若い人たちのところでは、横の方向に話を広げていくのが、やはりなかなか大変だったわけです。