■2004年1月に大幅リニューアルした岡山市の「電子町内会システム」。アンケートやカレンダーなどの機能を加え、コミュニケーションのさらなる活性化を目指す。岡山市では今後、町内会以外の地域コミュニティにもシステムを活用したい考えだ。(文:黒田隆明)p>
地域コミュニティの建て直しにITの活用を−−電子掲示板やテレビ電話の活用などの試みが、各地の自治体で行われている。岡山市が2002年3月にスタートさせた「電子町内会」も、そんな事例の一つとして注目されてきた。
■市民情報化政策における電子町内会の位置付け |
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ITリテラシーの向上、地域活性化、さらには参加型のまちづくりの基盤として期待されている |
では、岡山市の電子町内会は、これまでどんな成果を挙げてきたのだろうか。課題は何か。そして、課題を解決するために、岡山市では今後どのような手を打とうとしているのだろうか。
それを見ていく前に、まずは電子町内会の概要について簡単に説明しておこう。
■お互いの顔が見える電子コミュニティ
岡山市の電子町内会は、文字通り市内の町内会の電子的な活動の場だ。電子掲示板機能、スケジュール機能などがある電子町内会用のシステムとサーバー(容量は最大100MBまで)を希望する町内会に貸与し、町内会はそれぞれ独自にWebサイトを立ち上げるというものだ。2004年2月末時点で、市内28の町内会が、「電子町内会」の活動を行っている。
岡山市では、これまで電子町内会の募集を年3回のペースで実施してきている。参加申請は、一定以上の参加可能な世帯数の確保、編集委員会の設置など、町内会側に一定の条件を課している。
電子町内会サイトは、外向けページと内向けページの二つに分かれている。町の紹介など、誰もが見ることができるコンテンツを置いた一般向けページと、IDとパスワードによる認証で入る会員向けページである。町内会の電子掲示板など、地域活動のための情報交換は、基本的には会員向けページで行われる。
町内会に対して、市は補助金を一切出していない。サイト更新のためのパソコンを持っていない町内会は自ら調達することになる。金銭的な補助はないが、町内会サイトを立ち上げる前の講習や、立ち上げ後のパソコン操作に関する質問受付といった、サイト運営のためのフォローは、市として実施している。
システム開発には、市の予算はまったく使っていない。もともとは経済産業省のIT装備都市事業に採択されたときに開発した電子コミュニケーション用システムを電子町内会用に流用していた。2004年1月からは新しいシステム(詳しくは後述)を導入、こちらは総務省「eまちづくり」交付金2000万円の一部を使ってシステム開発を行っている。サーバー運営、ハードウエアなど、岡山市が負担している電子町内会の運営コストは年間約600万円だ。
電子町内会の目的は大きく2つある。市民のIT活用能力向上と、地域コミュニティ活性化、さらには電子町内会を通じての責任ある市民の市政参画だ。ゴールは「市民参加型のまちづくり」である。
電子町内会が企画され、実稼働する直前の2002年1月3日付けの地元紙(岡山日日新聞)のインタビューで、萩原誠司・岡山市長は次のように語っている。
「問題は場合によって“パブリックコメントジャック”が起きることです。これは一部の国の機関でも起こり始めています。強い意見を持っている人たちが、どーんとたくさん書いてくるんです。要するに1人1票の原則を超えてしまうんです。そこでさっき申し上げた“電子町内会”の制度が有効になります。今の情報システムでは“なりかわり現象”も起きる可能性があり、ここでも認証が必要なんです」。
つまり、顔の見える会員制の地域コミュニティである電子町内会を中核に据えて、信頼性の高い市民の意見を集めていこうというわけだ。