■デザイン、機能アップと横展開で参加に広がりを
参加者はまだまだ少ないが、うまく活用できれば地域コミュニティ活性化につながる電子町内会。今後の課題は、活用してくれる人をいかに増やしていくかに尽きると言っていいだろう。
まずは参加人数の絶対値を増やしたい。「そこをどうするかが課題です。若い人の参加が少ない。町内会と聞くと『役職が回ってきて何かやらされそう』と敬遠しがちなようです」(植月氏)。また、高齢者の参加を促すにも“パソコン操作”という壁がある。町内会の役員は高齢者が多い。町内会の活動が活発でも「パソコンのスキルがない」「インターネットはいずれ取り入れるだろうけど、今はまだいいだろう」と、電子町内会の参加には腰が引けてしまう町内会も少なくない。「電子町内会を使って何をやっていいのか分からない」「メリットが見えにくい」という声もあるようだ。
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新しくなった岡山市の電子町内会会員向けトップページ(サンプル)。様々な機能が加わり、印象も明るくなった。この画面では広告は表示していないが、広告掲載スペースも確保している。 | |
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岡山市では、二の足を踏んでいる人の参加を促すために、いくつかの対策を考えている。
まず具体化したのが、この1月から稼働し始めた、新・電子町内会システムだ。これまでの電子町内会はデザインも素っ気なく、機能も掲示板、に限られていた。
市の新着ニュースやイベント情報も、会員向けページから見られるようになった。「ここに来れば町内会が交流する場もあれば市の情報も見れる」(岡山市企画局情報政策部情報政策課主事の岡山博林氏)。地域ポータル的な機能を持たせることで、会員からのアクセス増を狙っている。広告スペースも新設した。地域で広告が入れば、町内会が収入も得ることも可能だ。
■電子町内会の新システムで加わった機能(一部) |
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カレンダーページの例 | カレンダーページの入力画面 | |
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1掲示板(e交流)には好きなキャラクターのイラストを選んで表示できるようになった。 | 1週間以内に掲示板(e交流)やカレンダーに新着情報があると、トップページの豆電球の絵が点灯して知らせる。 |
新システムの目玉とも言えるのが、アンケート機能だ。「パブリックコメントとまではいかなくても、まずは気軽に回答しやすい事柄から市民の声を集めていきたい」(岡山氏)という考えから作られたものだ。
電子町内会で簡単なアンケートを作成・公開できるほか、岡山市からのアンケートも会員向けページに掲載される。市が実施するアンケートについては、2004年度には岡山市のサイトのトップページでも同内容のものを公開していく予定だ。電子町内会経由の回答データ、個別に回答した市民からのデータすべてを集計できるようになっている(なお、市民がアンケートに回答する場合も事前登録が必要となる)。
■新・電子町内会システムではコミュニティ機能を拡充した |
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岡山市では、システムの機能充実だけでなく、システム利用の横への展開も進めていく方針だ。
そもそも、町内会活動に興味を示さない人は多い。また、町内会だけが地域での活動を行っているわけでもない。そこで、今後は公民館でのクラブ活動、小学校のPTA、若い人たちが中心になっている地域活動のグループなど、様々な地域コミュニティにも電子町内会のシステムを使ってもらおうというわけだ。電子的な地域コミュニティが広がれば、電子町内会も含めて地域間、コミュニティ間の交流も出てくるだろう。
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岡山市企画局情報政策部 情報政策課主事 岡山博林氏 |
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「リアルの場で目的があれば、電子町内会のツールはうまく使われて、地域活動が生き生きとしたものになる。当初は、ITを使えば参加者がすぐに増えて地域コミュニティが劇的に変わるのではないか、という“魔法の杖”的な期待を持っていたが、そうではないことが分かった」(岡山氏)。つまり、リアルの場で活動している人たちをまず支援していこうというわけだ。
この電子町内会ツールの横展開という構想は、まだ計画として具体化しているわけではない。具体化するには、これまで電子町内会を担当してきた市民総務課や情報政策課だけでなく、地域振興を担当するセクションとも共同歩調を取るなど庁内でも組織横断的な活動が必要になってくるだろう。岡山市の“電子町内会を中心とした、顔の見える地域活動”が、どのような広がりを見せていくのか。最終的な目標である「市民参加型のまちづくり」へと結びついていくのか。今後も注目していきたい。