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■店舗数の多さと思惑の一致でセブン-イレブンと提携

 足立区では当初、コンビニエンスストアのローソンと協力し、区内21店舗にある情報端末を使って、足立区のイベント情報などを提供するサービスを2002年6月から2003年3月まで試行した。ローソン側にコンテンツを渡すだけで、情報を公開でき手軽だったため、比較的短期間で実現できた。しかし、ローソンでのアクセス件数はジリ貧だったという。情報の更新回数が少なかったからだ。

 ローソンでの情報提供サービスと前後して、現在のようなスポーツ施設予約や料金収納などができるサービスを開始できないか、足立区はセブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3社と2002年2月から交渉を開始した。「すべてのコンビニと提携したかったが、システムの仕様が違うのでどこかに絞らなければなりませんでした」(足立区政策経営部の長谷川勝美 情報化推進室長)という。

 最終的にセブン-イレブン・ジャパンと契約したのは、足立区にあるコンビニ店舗数が決め手になった。セブン-イレブンが区内に約70店舗、ファミリーマートが約40店舗、ローソンが約20店舗だった。足立区の北千住地区に親会社のイトーヨーカ堂の第一号店舗があることも、交渉が進んだ背景にあるという。

 一方、セブン-イレブン側は、利用客のニーズを満たせるとして、集客増を見込んでいる。セブン-イレブンが毎年行っているアンケート調査では、利用したいサービスの中で行政サービスが連続して第3位を占めていた(1位は銀行などのATMの利用、2位は薬の購入)。平日しか手続きできない行政サービスに対するニーズは、もともと高かったのである。また、セブン-イレブンでは、東京都内限定で展開していた情報端末の「セブンナビ」(2002年10月31日にサービスを終了)のシステムを改修する時期に差し掛かっており、店舗での情報サービス拡充を図ろうとしていた。これも、行政サービスを組み込む大きな要因だった。

■個人情報が外部に漏れない仕組みに

 足立区とセブン-イレブンの思惑は一致し、2002年10月に契約を結んだ。同時にシステム開発をスタートしたが、コンビニで提供するサービス形態を決めるのに難航した。初めてのケースのため、「足立区モデル」として、料金の支払い方法やトラブル対応などの制度設計に約3カ月掛かってしまった。

 当初、話し合いには、区の情報化推進室や、足立区生涯学習振興公社、教育委員会、土木部の関係部署が参加した。だが、部署ごとの利害から、調整がつかないことも少なからずあったという。そうした場面で、セブン-イレブン側の担当者(情報システム本部システム企画部)が「顧客である住民の使いやすいように考えることを優先させましょう」と提案した。足立区政策経営部の長谷川勝美 情報化推進室長は、「本来なら当たり前の考え方なのですが、この一言で話し合いは進むようになり、とてもいい刺激になりました」と振り返り、民間企業の考え方が参考になったと評価する。

 こうして話し合いが進むようになっても、個人情報を漏えいしないようにどう扱うかが大きな問題として立ちふさがった。その解決策として、「セブン-イレブン店舗に設置してあるマルチコピー機に個人名を入力しない」という方法に行き着いた。

 具体的には、セブン-イレブンの店舗でスポーツ施設を予約する場合、住民は事前に足立区生涯学習振興公社の窓口で登録をして、IDとパスワードを取得しておかなければならない。個人名ではなく、取得したIDとパスワードをマルチコピー機で利用するのだ。IDの入力時に後ろからのぞかれても、IDは8桁の数字の組み合わせなので、個人名の特定はできない(写真)。店舗のレジに払込用紙を出しても店員が住民の名前などの個人情報を知ってしまうこともない。「レジで利用料金を支払うときに、店員が個人情報を入手できない方法を考えるのに苦労しました」(足立区政策経営部の長谷川 情報化推進室長)という。

マルチコピー機 操作画面
マルチコピー機で印刷した払込用紙。数字を組み合わせたIDで利用者を識別するので、個人情報が特定できない。 コンビニのレジで払い込み後に印字されるレシート。こちらも、IDのみを印字するので個人情報が特定できない。

 ガス、電気などの公共料金や、他の自治体でのコンビニ収納のケースなどでは、払込用紙に氏名などが明示されている。しかし、足立区の場合、厳しい個人情報保護条例に則して、区の行政サービスに関する個人名をコンビニのレジで扱うことは難しかった。通常、足立区で個人情報を取り扱う業務を行う場合は、区の個人情報保護審議会で審査を受けるなどの必要がある。事前にIDを割り振っておく方式なら個人情報が外部に露出しないので、2003年7月に区の個人情報保護審議会に一回報告するだけで済んだ。加えて、スムーズにサービスをスタートさせることもできた。