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■Webサーバーを分離構成にしての個人情報漏えい対策も

 システム構成も個人情報漏えい対策を意識し、Webサーバーを2台に分けて運用している(図)。住民が自宅などから利用するインターネット側と、セブン-イレブンの店舗側それぞれにWebサーバーとファイアウオールを設置している。住民側からもセブン-イレブン側からも、データベース・サーバーに直接アクセスできない。

足立区のコンビニを利用したサービスのシステム概要

 実は、Webサーバーを分離して運用することは、2003年10月のサービス開始直前になって決まった。他社のコンビニで個人情報が漏えいする事件が起きたので、セブン-イレブン側から個人情報が漏れないようさらにセキュリティが見直されたからだ。「既に2002年度にハードの調達予算やリースも決まっていたので、2003年度予算でハードを追加調達することになりました」(足立区政策経営部の長谷川 情報化推進室長)。

 幸い、セブン-イレブン側のネットワークには約80店舗のマルチコピー機しか接続していないので、性能の高いWebサーバーを導入せずに済み、それほどコストはかからなかった。足立区のデータセンターに設置したサーバーは、OSにLinux、Webサーバーにapache、データベースにOracle 9iを利用した。セブン-イレブン店舗とセブン-イレブンのデータセンター、足立区のデータセンター、足立区役所の間は、それぞれ専用線で接続している。

 セキュリティ以外でも足立区は、マルチコピー機の画面操作時の応答速度を向上することに苦労した。セブン-イレブン店舗側の通信回線の速度を補うため、色数を少なくして画面表示を速くするためのソフト部品をわざわざ作成し、それぞれの店舗のマルチコピー機にダウンロードして導入した。セブン-イレブン側のシステムに合わせてシステムを構築する必要があったのだ。

 また足立区は、コンビニ店舗から足立区のデータセンターに料金データが送信される間隔を考慮し、料金の二重払いが起きない仕組みを考える必要もあった。コンビニで施設予約をして払込用紙を印刷(仮予約)した後、利用者が同一店舗で30分以内に利用料金を支払う(本予約)ように規定しているのはそのためだ。支払わなかった場合、その払込用紙は無効になり、料金を支払えない(予約自体は3日間有効)。最長で1時間の間、払込用紙を再出力できないようにして二重払いを防いでいる。

 無効になった払込用紙の再発行に1時間必要なのは、支払った料金データが足立区のデータセンターに届くまで最長1時間掛かるためだ(仮予約から支払いまでの猶予時間が30分。コンビニ側が支払いデータを足立区側に送信する間隔15~30分と合わせて、最長1時間)。1時間たたなければ、足立区のデータベースに支払いデータが反映されないので、未払いによる用紙の無効状態なのか、支払い完了状態なのか施設予約システムで判別できない。このため、データが確定していない間(最長1時間)は払込用紙を再出力できないようにし、二重払いを防いでいる。

 施設予約システム自体の複雑さもシステム構築を難しくしたという。「テニスコートや野球場、運動場など、施設の違いによって、一人何件までの時間帯を予約できるかといった方法が違うので、単に施設予約といってもアルゴリズムが複雑になります」(インテグレータとしてシステム構築を担当したNEC公共ソリューション事業部第五営業部の内田信治 セールスマネージャー)。

 システムの実稼働後の2003年12月には、ある特定の時間にアクセスが集中し利用しづらくなる現象が起きた。施設の利用の抽選終了後、残った利用時間帯を予約するため、住民からの接続が殺到したためだ。その後、インターネット側からデータベース・サーバーへの同時接続数を増やすことで対応している。

■今後は住民票や印鑑証明などの発行も視野に

 サービス開始に当たって足立区では、住民からのトラブル対応マニュアルも作成しておいた。24時間365日利用が可能なため、操作方法や書類の記入方法などの問い合わせが来た場合の対応を考えておく必要があったのだ。

 これには、一般の業務時間が終了しても継続している婚姻届の24時間受理や、防災宿直といった既存の区役所の仕組みを流用することにした。まず庁舎に残っている宿直などの職員が、電話で要件と連絡先を聞き、庁内の担当課にファクシミリで内容を送信しておく。すると、次の日にファクシミリを見た担当課の職員が住民に電話を架けて対応する。

 住民が問い合わせる電話番号はマルチコピー機の画面などに表示されている。だが、「今のところ、施設利用でのクレームや帳票の書き方の問い合わせなどで、業務時間終了後に電話が架かってきたことはほとんどない」(足立区教育委員会の佐々木孝誠 生涯学習課計画担当係長)という。

佐々木 生涯学習課計画担当係長
  足立区教育委員会の
佐々木孝誠 生涯学習課計画
担当係長
  石井 内部情報システム係長
  足立区政策経営部情報化推進室
内部情報システム係の
石井正夫係長

 今後の課題としては、まずは利用件数を増やしていくことが挙げられる。前述のように足立区では、コンビニを利用した行政サービスによって、住民の利便性向上だけでなく、業務の合理化も狙っている。スポーツ施設予約については、インターネットも含めての利用率は高まってきているが、他のサービスはまだこれからだ。利用率が低ければ業務の効率化は達成されない。今後、利用促進策を講じる必要がありそうだ。

 利用率が上がってくると、マルチコピー機の利用頻度の問題も浮上してきそうだ。足立区政策経営部情報化推進室内部情報システム係の石井正夫 係長は、「施設予約をしたいのに、本来のコピー用途でマルチコピー機が使われていたり、コピー用途に使いたいのに施設の予約中で使えないという状況も出ています。頻繁に起きる場合は検討しなければなりません」と語る。今後、足立区がコンビニでのサービスを増やそうとするとこのような、ジレンマが起きそうだ。

 コンビニを利用した今回のサービスを、足立区では第1ステップと位置づけている。第2ステップの国民健康保険料のコンビニ収納は、既に2003年11月から開始済みだ。

 これからの第3ステップは、地方税の収納や住民票の発行を検討している。「既に住民票の専用発行機があったので、セブン-イレブンに設置を打診しましたが、店舗スペースが限られており他の商品を置くよりも効率的ではないとして断られました。今回のスポーツ施設予約のように民間企業のサービス・プラットフォームに相乗りできるよう、公的個人認証サービスを利用するなど模索したいと思います」(足立区政策経営部の長谷川 情報化推進室長)。