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日立総合計画研究所・編

 現在のインターネットは、通信方式として米国防総省が開発したインターネット・プロトコル(IP:Internet Protocol)を利用しています。IPv6(Internet Protocol Version 6)とは、このインターネット・プロトコルをベースに次世代インターネットに向けて改良された通信方式のことです。なお、IPv6に対し、現在主流であるインターネット・プロトコルをIPv4と呼びます。

 IPv6では、セキュリティの向上、優先度に応じたデータ送信の順位付けなどの新しい機能が追加されました。中でも特に重要な機能が、「アドレス空間の拡大」です。郵便を送る場合に住所が必要であるのと同じように、インターネット上の通信でも固有のアドレスが必要となります。このアドレスを「IPアドレス」と呼びます。

 現行のインターネット・プロトコル(IPv4)では、「192.168.10.0」のように8ビットずつ4つに区切られた32ビットの数値がIPアドレスに使われているため、最大で2の32乗(約43億)台のコンピュータしか識別できません。しかし、近年のブロードバンド(広帯域ネットワーク)の急速な普及によりインターネットに接続されるコンピュータの数が急増し、IPアドレスの数が不足することが懸念されています。

 さらに、ユビキタス情報社会の到来により、パソコンだけでなく家電製品や自動車など身の回りの製品に組み込まれたコンピュータがインターネットで接続されるようになると、IPアドレスの数は絶対的に不足すると見込まれています。IPv6では2の128乗(約43億×43億×43億×43億)というほぼ無限に近いアドレスが利用でき、IPアドレス不足の問題は解消します。本格的なユビキタス情報社会を迎えるにあたって、IPv6は必要不可欠な技術であると言えるでしょう。

 政府もIPv6の普及促進に力を入れています。e-Japan重点計画2004では、「IPv6の導入等による情報家電のユビキタス利用の推進」という施策を掲げて、ユビキタス環境の整備を進めています。具体的には、(1)メーカーが異なる家電製品どうしの相互接続を可能にするための標準化、(2)利用者が必要とするサービス/コンテンツを簡単に取得できるようにするためのユーザー・インタフェースの確立、などを目指しています。今後、ユビキタス環境の整備が進むことで、その中核技術であるIPv6は広く普及すると見込まれます。

 さらに、IPv6の普及を促進するには、IPv4で構築された現行のネットワークをIPv6へ円滑に移行する必要があります。総務省は2004年度に約17億5000万円の予算(2005年度もほぼ同額の予算を要求)を投じて、インターネットのIPv4 からIPv6 への移行を実現するためのモデル実証実験を実施しています。IPv6ネットワークの運用上の課題を洗い出し、その解決を図るとともに、移行モデルを策定して、IPv6 の普及を促進することが目的です。この「IPv6移行実証実験」の一つとして、大阪府が主体となり堺市(大阪府)、生駒市(奈良県)、宇治市(京都府)などと共同で設立した「大阪都市圏IPv6活用推進グループ」では、2005年1月から2月まで大阪府Webサイト(一部)のIPv6への簡易移行を実施します。また、岡山県が民間企業と共同でIPv6の研究開発や普及を推進する組織「岡山IPv6コンソーシアム」を結成するなど、独自に取り組みを始めている地方自治体もあります。

 ただし、IPv4ネットワークがIPv6ネットワークに移行しても、利用者が変化を体感できるほど急に便利になるわけではありません。というのも、IPv6で強化されたセキュリティの向上、優先度に応じたデータ送信などの機能は、既存のIPsec(IP Security Protocol。暗号化機能)やRSVP(Resource Reservation Protocol。伝送帯域を制御する機能)などの技術を利用してIPv4ネットワークでも実現しているからです。むしろ、IPv6ネットワークへの移行の利点は、ほぼ無限に近いアドレスが利用できることによって、多種多様な情報機器から電子政府/電子自治体サービスが利用できるようになり、サービス利用者の拡大が期待できることであると言えるでしょう。