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日立総合計画研究所・編

 ワンストップ・サービスとは、もともと、複数の部門や機関にまたがる行政サービスを一つの窓口で受け付けて提供することを指します。従来、役所では、行政サービスの種類や管轄によって、行政サービスを提供する窓口が異なっているのが一般的でした。これでは、複数の行政サービスを受けたい住民は、役所の複数の建物を移動したり、同じ建物の中でもいくつもの窓口を回らなければなりません。こうした仕組みは、利用者である住民にとって不便であるという反省のもと、役所内の管轄に関わらず、複数の行政サービスを1カ所の窓口で受けられるよう一元化する取り組みが行われました。こうした仕組みを「ワンストップ・サービス」と呼び始めました。

 最近では電子政府の構築によって、申請や届出など行政サービスに関連する手続きをホームページ上で行うことができるようになってきました。そこで、役所内の組織の違いを意識せず、1カ所のWebサイトで複数の手続きができる機能を提供することも、ワンストップ・サービスと呼んでいます。さらに、必要な情報を1回入力するだけで関連諸機関への手続きも同時に完了するといった、1カ所でしかも1回の手続きで得た情報を関連するすべての処理に反映できる仕組みも求められるようになっています。

 例えば、イギリスの行政ポータルサイト UK Onlineにある「iammoving」というコーナーでは、引越しに伴う住所変更手続きのワンストップ・サービスが提供されています。「iammoving」では、利用者が1回だけ住所変更手続きの入力を済ませば、パスポートや運転免許などの登録情報に変更が反映されます。さらに、約750の民間企業や団体(水道やガス、電話、電気などの公益サービス、金融機関、スポーツジム、同窓会など)を選択して、同時に住所変更手続きを行うこともできます。行政機関のみならず、官民双方の手続きをワンストップにすることによって、利用者の利便性を大幅に高めた例といえるでしょう。

 日本政府も、電子政府によるワンストップ・サービス実現に向けた取り組みを既に着手しています。現在CIO連絡会議(各府省情報化統括責任者連絡会議)を中心に見直している「電子政府構築計画」の中で、電子政府の総合窓口「e-Gov」などを使った更なる取り組みが検討されているところです。

 政府のワンストップ・サービスへの主要な取り組みとしては、「輸出入・港湾手続のワンストップ化」と「自動車保有手続きのワンストップ化」が挙げられます。輸出入・港湾手続きや自動車保有手続きは、複数の省庁に対する申請や届出が必要で、利用者である企業や住民に重い負担となっています。そこで、関連する複数の手続きをオンライン化すると同時にワンストップ化する取り組みが進められています。「輸出入・港湾手続のワンストップ化」については2005年度末までのできる限り早期に最適化計画を策定すること、「自動車保有手続きのワンストップ化」については2005年中にワンストップ化を実現することなどが、「電子政府構築計画」改定案に盛り込まれています。

■自動車保有手続きのワンストップ・サービスの実現イメージ(出所:国土交通省)
ワンストップ開始後の実現イメージ

 また、政府は、行政ポータルサイトである電子政府の総合窓口「e-Gov」を、ワンストップ・サービスの窓口にしていこうという取り組みも推進しています。「電子政府の総合窓口」から複数の電子申請を一度に提出できるワンストップ・サービスの実現に2005年度末を目標に取り組んでいく予定です。

 このように、日本でも取り組みが進展しているワンストップ・サービスですが、利用者の利便性を高めていくためには、官民の垣根を越えた協力が不可欠です。「輸出入・港湾手続のワンストップ化」と「自動車保有手続きのワンストップ化」に関しても、政府/公共部門だけでなく、関連する民間部門が参画して取り組みが進められています。こうした民間部門の参画の意欲をどのようにして高めていくかも、電子政府におけるワンストップ・サービスの実現にあたっての課題といえます。