4月22日に行われた設立総会の様子。
 

 高知県は2004年4月22日、高知県電子自治体推進協議会を設立し、高知市内で設立総会を開催した。同協議会は、今後高知県が共同アウトソーシング事業を本格的に展開していくにあたり、県と市町村、地元および全国のITベンダーなど23社、さらには高知工科大学が参加し、ITシステムの技術研究や実証実験などを行う。具体的な成果目標としては、来年度(平成17年度)を“共同アウトソーシング本格展開の年”と決め、それまでに同事業や運営主体の基盤を明確化し、県内の市町村で電子自治体の効果を示すこと、ビジネスモデルを試行することにある。

 高知県電子自治体推進協議会が掲げている成果目標は以下の3つ。

(1)運営主体の設立準備
・事業・経営計画の立案、基盤・システムの検討を行う。 ・協議会において、参加団体を中心に必要となる資金および人材を準備する。

(2)市町村の参加促進
・市町村ニーズを詳細に把握して、モデル事業などを通じ、電子自治体の効果を分かりやすく高知県内の市町村に示す。これによって来年度(平成17年度)以降からの事業に参加する自治体数を拡大する

(3)ビジネスモデルの試行・改善
・SLA(サービスレベル・アグリーメント)や外部企業アライアンス、料金設定など、これまでに(平成15年度に)検討した個別事業のビジネスモデルを試行することで、来年度以降からの本格展開に向けて改善する。

 元々、高知県ではCDC(コミュニティデータセンター)構想や電子調達システムなど共同アウトソーシングによるITシステム運営計画に取り組んできた。ところがここにきて、システムの運営主体として予定していた第三セクターの設立を見送った。一番大きな理由は財政難によるコスト削減である。

 今年度は同協議会でこれら個別の事業を見直し、「具体的にどのようなサービスを提供できるか」「セキュリティはどうするか」「費用はどのくらいか」といった課題を民間企業を巻き込んで明確化する。それによって、来年度に予定している共同アウトソーシングの本格的な展開に向けて、実現可能なビジネスモデルに落とし込むのが目的だ。

 協議会としての検討・実施期間は、2005年3月末までの1年間。まずは今年(2004年)9月に各WGによる研究成果の中間報告会を行い、2005年3月の総会で来年度17年度に向けてどのような方向性で具体的にアクションを起こしていくかの最終報告をする予定だ。

 今年度(平成16年度)の同協議会の総予算は約1750万円(うち高知県の予算は300万円)。WGの活動費は約500万円である。それ以外にかかる費用は、すべて幹事企業やWGの参加費用でまかなわれる。

 4月22日に開催された総会の冒頭、壇上に立った高知県理事 情報化戦略推進担当の石川雄章氏は、設立の趣旨について次のように述べた。

 「高知県は、1990年代から地域の情報化戦略に取り組んできた。e-Japan戦略を受け、現在、自治体が直面している課題とは、実際にどういったサービスを進めていくのかということにある。お金を支払ったのはいいが、自治体のサービスの姿が見えないのが実態ではないだろうか。これは高知県だけの課題だけではなく、全国の自治体が抱えるものだろう。高知県では昨年度、県と市町村が共同で共同アウトソーシングについて検討してきた。コンセプト作りと具体的な検討が必要だが、そのためにはまず現場で実際に取り組んでみて、事業としての体制やコストを詰めていくのがよいのではないかと考えた」。

 そこで高知県電子自治体推進協議会は、具体的に(1)高知CDCの事業計画の立案、(2)モデル市町村における電子申請・届出の実施支援、(3)IT調達適正化支援、システム最適化、情報セキュリティ確保支援、(4)共同利用アプリケーションの実証、などを1年間かけて取り組んでいく。

 同協議会を構成するのは、高知県をはじめ、県下の野市町(のいちちょう)、地元および地元および全国のITベンダーなど23社、さらには高知工科大学(清水研究室)である。高知県と幹事企業10社が核となり、一般会員とワーキンググループメンバーで構成される。幹事会社は、高知電子計算センター、富士通、NTT西日本、プロシード、日立製作所、三菱総合研究所、四国情報管理センター、トレンドマイクロ、サン・マイクロシステムズ、マイクロソフトの10社だ。

 協議会の構成は、総会の下に高知県と幹事企業による幹事会と2つの小委員会を持つ。2つの小委員会では(1)事業・経営計画と(2)システム・基盤計画をそれぞれ議論する。その下で全部で7つのワーキングループ(WG)が発足する。ワーキンググループでは以下のようなテーマについて、複数の企業が取り組み、具体的な提案をしていく。

    WG1:電子申請(高知電子計算センター)
    WG2:コールセンター(富士通)
    WG3:ICカード(NTT西日本)
    WG4:IT調達適正化(プロシード)
    WG5:地域EA(日立製作所、三菱総合研究所)
    WG6:情報セキュリティ(四国情報管理センター、トレンドマイクロ)
    WG7-1:シン・クライアントを利用したテレワーク実証実験(サン・マイクロシステムズ)
    WG7-2:官民連携統合ポータルサイト実証研究(マイクロソフト)
    WG7-3:県内ベンチャー等ASP・バックオフィス実証(高知県)
    ※ カッコ内はWGの幹事企業

 今回の設立総会では、各テーマの幹事企業が取り組み趣旨と目的、研究の実施内容(体制、スケジュール、予算)を発表した。例えば、電子申請に取り組むWG1では、市町村合併を予定している野市町をモデル自治体にして電子申請サービスの導入を実際に行い、今年度末までに他市町村にも使えるような導入ガイドブックを作成することなどとしている。

 設立総会で議長に任命され、複数のワーキンググループにも参加する四国情報管理センターの代表取締役である中城幸三氏は、今回の取り組みについて「我々のような地元のIT企業が大手ITベンダー、システムインテグレータと共同でシステムを提案していくのは、地元密着型のシステムを構築するという点で意義は大きい。協議会参加にかかる費用はこの1年間に関しては持ち出しだが、当社としても、高知県での実績を通して、ビジネスを外に広げてゆけるチャンスとなる。ほかの参加企業も短期的よりは将来的な展望を持っている」と説明する。

 総会後の懇親会では、高知県知事の橋本大二郎氏が挨拶の壇上に立ち、次のような期待を寄せた。「高齢化、少子化といった問題が深刻化し、ここ高知県でも財政事情が悪くなりつつある。そうした厳しい状況の下、県および県内の自治体が共同でITを積極的に活用するなどの取り組みが進めば、新しい雇用創出につながる可能性がある。今回設立された協議外によって、行政BPRの実現やその効果によるコストダウン、さらには住民の暮らしの向上に結びつくような成果を期待したい」。

(山本玲子)