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日立総合計画研究所・編

 「デジタルデバイド」(digital-divide)とは、パソコンやインターネットなどの最新のITを活用し、それによって社会的・経済的な成功を得る人々と、こうした技術を活用できず情報化の恩恵から阻害される人々との間に生まれる格差をいいます。

 インターネットをはじめとしたITが日本より早い時期に普及した米国においては、1990年代半ばからデジタルデバイドが問題視され始め、2002年2月に公表された商務省の報告書「A Nation Online」によると、全般に格差の縮小が報告されているものの、例えば所得、学歴、年代、民族などによってインターネット利用率に依然としてかなりの格差があるようです。

対策は物理的アクセス確保とユニバーサルデザイン

 日本においても、総務省が2002年5月に公表した「通信利用動向調査」によると、米国同様に全般に格差縮小の傾向にありますが、例えば所得、年代、地域などによってパソコン保有率、インターネット利用率の格差はまだまだ大きいと言えそうです。

 e-Japan戦略に基づき、2005年に向けて電子政府の構築を急ぐ日本においては、今後多くの行政サービスがインターネットを通じて提供されるようになるため、すべての国民に対して公平な利用機会を保証する必要があります。そのため、電子政府構築に並行してデジタルデバイドの解消、予防に努めることが急務となっています。

 デジタルデバイドの解消、予防は決して容易ではありませんが、米国では「アクセシビリティ(すべての人がITにアクセスできる状態を保証する)」という概念を基本理念にしています。

 アクセシビリティの確保のためには、まず、機器・サービスを手軽に利用できるよう、物理的アクセスを確保することが重要です。e-Japan戦略に基づき、公民館、図書館などの公共機関への情報端末の設置や、過疎地でのブロードバンドネットワーク整備支援などが具体策として進められています。地方自治体でも、例えば群馬県太田市では、第3セクターで株式会社ブロードバンドシティ太田(BBCO:ぶぶこ)を設立し、ADSLを利用した地域イントラネットの構築を行っています。

 また、健常者だけではなく何らかの障害を持つ人々にも利用できる機器やサービスを用意するなど、使いやすい(アクセシブルな)サービスを利用者に提供するために、「ユニバーサルデザイン」の推進も重要です。米国では、1998年に法改正され、連邦政府機関が開発、調達、維持、利用するIT関連ハード・ソフトやホームページなどは、障害者にとってもアクセスできるものにすることが義務付けられました。「Section508(リハビリテーション法508条)」と呼ばれる法律がそれです。

 日本でも、「障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針(旧郵政省、1998年)」や「障害者・高齢者等情報処理機器アクセシビリティ指針(旧通産省、2000年)」などのガイドラインが策定され、視覚や聴覚に頼らないで入力できる、色の識別を必要としないで入力できる、入出力操作に必要なキー、ボタンなどの位置が容易に確認できるなど障害者や高齢者を支援する機能をもった機器の開発、普及促進が進められています。最近では、3次元CG(コンピュータグラフィックス)を使った手話アニメーションソフトや、キーボードやマウスを使わず手書き入力情報をデジタル化して行政機関への電子申請が可能なシステムも開発されています。

 さらに、情報機器に慣れていない、いわゆる「情報弱者」と呼ばれる人々に対して、IT活用能力の向上を図るためIT教育・訓練を進める必要があります。日本では、e-Japan戦略に基づき、2001年には550万人規模のIT基礎学習(IT講習)が実施されました。初等中等教育においてもIT活用の授業が展開され始めています。

 デジタルデバイド解消の対策は、電子政府構築の成否の鍵を握る重要な課題となるでしょう。