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日立総合計画研究所・編

 データウエアハウス(Data Warehouse)とは、直訳すると「データを蓄積する倉庫」という意味です。1990年に米国のビル・インモン氏が提唱した概念で、日常の業務の中で発生して業務システムのデータベースに格納されている情報の中から、意思決定支援を行うための情報を抽出し、それらを組織全体で活用できるように1カ所に集めようという発想から生まれたものです。

■データウエアハウスの活用イメージ
データウエアハウスの活用イメージ

 これまでの政府・地方自治体のIT化は、業務の効率化やサービス向上に向けた取り組みが中心でしたが、近年、一部の政府・地方自治体では、データウエアハウスを構築し、政策立案や意思決定支援に情報を積極的に活用しようとしています。

 現在、イギリス政府の内閣府は人事政策の策定にデータウエアハウスを活用しています。イギリスでは、国家公務員に一定比率以上の女性、少数民族、障害者を採用する政策が採られています。この政策の達成状況を測定し、その改善につなげるために、国家公務員の人事政策を担当する内閣府人事部(the Corporate Development Group)は、全省庁で約47万人分にものぼる人事情報を正確に把握し、分析しなければなりません。

 しかし、政府の人事システムは各省庁で個別に構築・運営されていたため、データの収集に膨大な時間と労力がかかっていました。そこで、内閣府は各省庁の人事システムから人事情報を収集・格納するデータウエアハウスを構築し、人事政策を策定する際に必要な情報を、容易に活用できるようにしました。

 なお、このようなデータウエアハウスは、業務データベースからデータを抽出し、独立したデータベースとして運用します。そのため、既に稼動している業務システムへの影響を最小限にとどめることが可能という利点があります。

データを様々な角度から分析して問題点や解決策を検証・発見

 また、データウエアハウスは、多次元データ分析(OLAP:On-line Analytical Processing)、データマイニングなどの機能を備えており、データを様々な角度から分析して問題点や解決策を検証・発見することができます。米国ニューヨーク州では、ホームレス支援プログラムをより効果的なものにするため、1999年からナレッジネットワーク(Knowledge Network)と呼ばれるデータベースを構築し、州の保護施設サービス局、市役所、NPOなどプログラムを実施している複数の組織間で情報共有を行っています。

 そこではデータウエアハウスの多次元データ分析機能が利用されており、ホームレスに関する情報を「年齢別」、「サービス種類別」、「地域別」など任意の切り口で参照・集計することで、プログラムの改善に役立てようとしています。

 1990年代に民間企業でデータウエアハウスの導入が進んだ背景には、民間企業における業務システムの構築がほぼ一巡したことにより、業務システム内で発生したデータの再利用・再活用に対するニーズが高まったことや、経営環境の変化が激しく、経営戦略策定におけるITの果たす役割が大きくなったこと、などが背景にあります。

 しかし、このような状況はもはや民間企業に限られた話ではありません。地方自治の進展や社会環境の変化のスピードが加速していることなどを背景に、これからは政府・地方自治体の運営にも、企業経営に求められるような戦略性が期待されています。その実現のためには、政策立案の質の向上に向けた重点的な取り組みを進め、そこにITをいかに活用するかが課題であり、データウエアハウスはそのための有効なツールのひとつと言えるでしょう。