PR

日立総合計画研究所・編

 現在、ユビキタス情報社会が既に到来しつつあるといわれます。ユビキタスとは、ラテン語に由来する英語(Ubiquitous)で、「至るところにある」「遍在する」という意味です。米ゼロックスの研究グループの一員であったマーク・ワイザー氏が1991年に発表した論文がきっかけとなり、ユビキタス・コンピューティング、ユビキタス・ネットワークなど、「ユビキタス」という言葉とそれに関連する概念が注目を集めるようになりました。ユビキタス情報社会もそのひとつです。

 ユビキタス情報社会とは、(1)パソコンだけでなく情報家電、ゲーム機など身近な機器、さらには家具や衣類など身の回りにあるものすべての中にコンピュータが入り込むこと、そして(2)それらがすべてネットワークで接続されることによって実現される社会のことです。

 ユビキタス情報社会が実現すれば、私たちは、いつでも、どこでも必要な情報にアクセスし利用できるようになります。また、生活の隅々に情報が浸透することによって、より安全で便利な社会が実現することが期待されます。政府・公共部門も例外ではなく、電子政府はユビキタス情報社会を実現するための重要なインフラといえるでしょう。

 現在、内閣府のIT戦略本部で検討が進められている、「e-Japan戦略」に続くわが国の新しいIT戦略「IT基本戦略II」でも、ユビキタス情報社会を意識した仕組みが提案されています。この新戦略案では、医療、食、生活など、国民の身近な分野で、多くの人々がメリットを実感できる形でのITの利活用が提案されています。例えば、「センサーを通しての高齢者の継続的な在宅医療、在宅健康管理」「意識しなくても、その時、その人にとって適切な温度・湿度が自動的に実現される」「ICタグに食品の生産・加工・流通履歴情報を搭載し利用者が確認可能にする」などのシーンが想定されています。

 技術や制度がさらに整備されれば、「薬品の飲み合わせが悪い場合は自動的にアラームが出る」などといったシーンも考えられるかもしれません。こうした仕組みを実現していくためには、交通、金融、産業など社会の各部門における情報化とネットワーク化が進展することが不可欠の条件です。


安定的な情報流通とプライバシー問題への対応が課題
 
 ユビキタス情報社会のさきがけとなるような電子政府サービスも始まっています。携帯電話対応のWebサイトを運営する自治体はかなりの数に上ぼりますし、例えば、政府でも「小泉内閣メールマガジン」は携帯電話・PHS向けの配信も行っています。コンビニエンスストアなどでの情報提供や施設予約を行っている千葉県市川市の事例(360+5情報サポート)もよく知られた事例の一つです。

 米国のバージニア州では、PDAなどのモバイル端末への情報提供サービスを行っており、特に「ロビイスト・イン・ア・ボックス」と呼ばれるサービスでは、サービス利用者1人あたり600ドルの登録料(行政部門職員は400ドル、議員およびそのスタッフは無料)を払えば、提出されている法案に進捗があった場合、関連情報がPDAに送信されてくるようになっています。

 ただし、本格的なユビキタス情報社会を迎えるには、大きくは2つの課題をクリアーしなければなりません。第1に、安定的な情報の流通や管理がこれまで以上に要求されることです。ユビキタス情報社会においては、情報が社会の重要なインフラとなります。このため、何らかの理由で情報の流通や蓄積に障害が生じた場合の被害は、従来に比べて格段に大きくなります。

 第2に、プライバシー問題への対応です。ユビキタス情報社会では、利用者自身や利用者の行動についての情報を蓄積・加工することによって、より的確にその人のニーズを把握し、その人にあったサービスを提供することが可能になります。これは逆にいえば、個人の行動の監視や、個人情報の目的外利用も容易になるということを意味します。

 情報インフラの安定性確保やプライバシー保護が実現して初めて、真に安全で快適なユビキタス情報社会が実現されるといえます。電子政府においてもこれらの課題への適切な対応が一層求められるようになるでしょう。